第4話 〜 アスカ、融解!(後編)
作 / Sa−toshi ・ 画 / 森里 涼


 アスカの中のおんなの存在感に触発されて目覚めた獣の影がシンジの心の中に膨張する。彼女の唇を強く吸いながら、その生温い質感に昨晩の豹変振りを思い出した彼の中の「いつものシンジ」が、一瞬躊躇する。その高慢なまでの気位の高さと気性の激しさを象徴するかのような赤毛をなびかせている目の前の少女は、つい昨日まで自分を見下し、鼻にも掛けようとしなかったではなかったか?

(あのアスカに手を出すなんて本当にイイのか?シンジ)

 そのためらいは、早送りのビデオモニタのように過去の記憶の断片を彼の脳裏に蘇らせる。

「こう見えてもアタシ結構、胸おっきいんだよ」

 2人きりで合宿を強制された時のアスカの姿と仕種。シャワーから上がった時、シンジを挑発するフリをして彼をからかった彼女。だが、その時の嬉々とした表情は本当に演技だったのか。

「ヘンなとこ、触わんないでよ!」

 伊東沖で使徒の追撃に遭った時に初対面の彼女の提案で、いきなり弐号機に相乗りして戦った際のアスカの姿が思い浮かぶ。ためらいはしていたが、彼女はシンジとプラグスーツ越しに触れ合うことを許した。それは任務のための義務感というよりも直感的な情感の交流を彼女が認めたからではなかったのか? その時の彼女の細い腰から柔らかく張った尻や太ももの感触。LCLが充填された状態ではあったが、互いの体に纏われた薄いプラグスーツを通して伝わる彼女の体の温もりと鼻先に絡んだ彼女の髪。

「ふゥんッ・・・」

 キスされた彼女の鼻から漏れたその鼻息とも喘ぎともつかぬ甘い声に、覚醒しシンジの心を満たした影は結論を下した。

(アスカは、僕とシタかったんだよ)

 激しく押し付けたアスカの唇を割って、シンジの舌がその裏側をなぞる。背中に回されていた彼の腕が密着した2人の体の間に潜り込むと、その指先が肌に貼り付いている彼女のブラウスのボタンに掛かり、それを1つ、2つと慣れた手付きで外していく。

「イ、いやッ!」

 その中の重く湿ったブラのカップの上から、その下に息づくボリュームの中心に左右同時に人差指が触れた途端、アスカは唇を離して両手でシンジの体を押し戻した。すっかり彼のペースにはまっていたアスカが理性を呼び戻そうと険しい顔で睨んでいる。薄暗い廊下で彼女の前に立つ少年は、本当にあの気弱な碇シンジなのか? 奥の居間の窓から稲妻の閃光が部屋の中を照らした時、そこから差込んだ光がわずかに映し出した少年の顔は、大きな自信と強い欲求に不気味な微笑みを湛えている。

「アンタ・・・誰?」

 戸惑うアスカ。しかし別人のようなオーラを放つ目の前の少年は、構わず彼女の肩に手を掛けると強い力で廊下の壁に押さえ付け、その首筋に強く唇を這わせてくる。

「やだッ!」
 
 悲鳴を上げて押し返そうとするアスカだったが喉元から鎖骨の辺りに彼の唇が降りてくると、悪寒とは違った痺れが全身に走る。シンジの鼻息がリボンの解けかかったブラウスの襟元から胸元に掛かり、強く体を密着させて彼女の退路を絶ちながら、その両手が重く濡れて黒っぽく変色した青色のジャンパースカートの肩紐を素早く払い落とす。ブラウスの裾を引っ張り出したシンジの頭がその胸の上に押し付けられると、2人はその場に崩れ落ちた。

「やめてッ!それ以上しないでぇ」

 足でシンジの体を蹴り退けようとしたアスカだが、シンジは体を浮かせて彼女の両足の抵抗を回避し、逆に自分の両足で彼女の腰を抱え込む。両手で捲り上げたブラウスからあらわになったシンプルな白いブラに包まれた彼女の胸のふくらみは、まだ豊満とは言い難いが嵩の高い整った三角錐を保ち、その谷間にシンジは顔を埋めて、淡く香る体臭に鼻を鳴らした。その鼻息が胸元に掛かり、彼の両手がカップの下の縁から柔らかな小山のボリュームに侵攻すると、アスカは体をよじって最後の抵抗を試みる。

「もうッ、や・・・めてッて、ば・・・ぁ」

 既に熱を帯びた彼女の体は、両手を床に突っ張って支えなければならないほどにシンジの行為に反応して震え始めている。拒絶を叫ぶ声も途切れがちだ。アスカはもう振り返ってはくれないだろう加持リョウジの姿を思い出して自制を保とうとしたが、それは逆効果にしかならなかった。熱くかすむ脳裏に思い描く男の姿は昨日の夜、そして今朝と同じ少年の姿…。別人に映ったはずの直前の野卑な表情ですら、その姿にボケて重なる。堅固なプライドで身近な少年の存在を否定しようとしてきたアスカの心は今、体の中に焚き付けられた炎によって融解していく。

「あぅッ、そこ・・・あふぅッ」

 シンジの指先に直接触れた胸の頂きの小さな蕾が、プックリと硬く膨れてそこをくすぐる。それをシンジが軽く摘むとアスカは堪らず再びシンジの右の肩口に頭を寄せ、額を押し付けて呼吸を乱す。胸の芯から広がる苛立たしい感覚とそれを許しているという羞恥心が、彼女の本能にチカチカと火花を飛ばす。彼女の体から湿気を帯びて立ち上る体臭が心なしが濃く香り始めると、雨水を被った冷たい服の下で小さくなっていたシンジの分身がムクムクと勃起した。

「イケナイ、そんな・・・したら」

 いつしかシンジの頭をかき抱いて細く白い喉を震わせているアスカは、ふくらみをまさぐっていた彼の右手がスカートの裾に忍び込み、投げ出した両足を開いた格好の彼女の膝頭から太ももの上を這い、やがて彼女の下腹部を覆う布に辿り着いた右手が生暖かいその上から恥丘を撫で付け出すと腰をよじってその手から逃れようとする。もうそこが既に被った雨とは違うもので温かく緩み出していることを彼に知られたくない。が、その恥じらいが彼女の体の幹にさらなる衝動を呼んでしまう。

「ダメだって・・・」

 スカートの上からシンジの手を押さえ付けた彼女の左手は、彼が抵抗を無視して指先をパンティに刻まれた股間の溝に這わせて前後にスライドさせると、それを自ら強く押し付ける。シンジが胸に顔を埋めたまま囁くと、アスカは小声を震わせた。

「濡れてるよ」
「だって・・・」

 更にシンジが右手をパンティの中に直接侵入させようとすると、彼女の左手がシンジの右腕を掴んでそれ以上の行動を、今度ははっきりと制止する。そのまま恥ずかしい所を触れらることを拒絶したのは、彼女がシンジを前にしておんなに目覚めたことの証だったかもしれない。

「シャワー、浴びさせてよ・・・お願い」

 ズボンの中でブリーフを突き破らんばかりに直立した分身に急かされるシンジだったが、仰ぎ見た彼女の恥じらいと興奮の入り混じった赤ら顔に、行為の中断を受け入れる。

(焦るな、獲物は逃げないよ)

 シンジの影が己の分身をなだめる。今までの前戯ですっかり上気したアスカは、以前に自らキスを迫っておきながら彼を罵倒した時とは違う。

(お楽しみはこれからだ)

 シンジは体を離して頷く。アスカははだけたブラウスの前を右手で合せると立ち上がり、小走りに浴室に向う。脱衣スペースに入る前、彼女はシンジに背を向けて言った。

「待ってて・・・」

 カーテンを引いたアスカをニヤリと見やるシンジの心の中には更なる興奮が渦巻いていた。

■■■

 ミサトのマンションとシンジたちの通う第壱中学校の間にある例の喫茶店。激しく降り始めた雷雨に出勤時間帯のモーニングラッシュを過ぎた店内は、雨をやり過ごそうという客で再び混み始めていた。窓の外の歩道を叩く降り続く雨を眺めながら、先刻アスカを追い払った加持リョウジは相席の待ち人と語らう。

「スーツ姿にルージュも決まった魅力的なキミを目の前にしてると、不真面目な僕としてはこれから仕事って気分は失せちゃうねぇ、キミさえ良ければこのままどこかにシケこんじゃいたいナ」
「昔っから、そういうチャラけた所は変わってないわね加持クンは・・・」

 派手なストライプシャツに緩めたネクタイ、無造作に後にまとめた中途半端な長髪と剃り残した髭の目立つ男臭い表情がNERVという準軍隊的組織とそぐわぬ加持の向かいに座って、本気とも冗談ともつかぬ彼の言葉に微笑んでいるのは、涼しげなブルーのボディコンシャスなスーツを着た赤木リツコである。

「こんな不良男に引っ掛かってるミサトやアスカの気持ちが、よくわからないわねぇ」
「オイオイ、学生時代から顔付き合わせてる僕の魅力が、未だに理解してもらえないのかい?それにいくらなんでもアスカは守備範囲外だよ」
「どーだかね」
「変な趣味は持っちゃいないさ、リツコ女史には僕をもっと知ってもらわなくちゃいけないな」

 談笑する加持の爪先がテーブルの下で差し向かうリツコの足首を開くように動くと、彼女はその爪先を逆に軽く踏んだ。手にしてたコーヒーカップをテーブルの上に置き、リツコは微笑みを止めて静かに話始める。

「戯れ言はこのくらいにして、アスカのことだけど」
「昨日の実戦訓練、大失敗だったって?」
「さすがね、もう知ってるなんて」
「仕事柄、早耳でね」

 加持は目線を雨粒が流れ落ちる窓に向けている。窓に先刻退けたアスカの不機嫌そうな表情が思い浮かんだ。

「でもね、あの娘にはそろそろシンジ君のパートナーとして目覚めてもらわなくちゃならないわ、残酷かもしれないけどね」
「それで一服盛ろうって腹積もりなのかい?こわいねェ、科学者っていうのは・・・」
「現状では覚醒が必要なのは初号機、零号機をオモチャにしている碇司令も、弐号機とそのパイロットについてはいずれ消耗品になると割り切ってるはずよ」

 リツコの言葉にEvaの開発運用における裏方たちの打算と、その掌で躍らされる少女の身の上を察して加持は小さく首を振り溜息をついた。謎の存在・使徒による破滅的終末回避を目的にしたEvaの開発運用を括る「E計画」の隠された部分、人の進化暦への挑戦、あるいは神域への暴挙とも言えそうな「心と体の再構築」の実験において、必要ならばいたいけな少女の心と体を弄ぶこともいとわない大人たちの姿。密かにそれを探る加持だが、それを止める力は彼にはない。その空しさも感じながら話の危うさに、彼は真顔でリツコを見つめ声を落とす。

「こんな話、外でするのはマズいだろう」
「あなたがこの街にいること自体、まずいんじゃないかしら?」
「上層部が何か?」
「多分ミサトは、訓練失敗について今頃問責されてるでしょうね、保護者を買って出た彼女の日頃の軽率な行動について」
「半分は僕の責任だ・・・」

 加持の複雑な立場に薄々気付いているリツコは険しい表情で、彼がNERVにとって今や油断ならざる人物になりつつあることを警告する。

「キミに嫌われちまったら、いよいよ俺もヤバいかな・・・」

 目線を窓の外に戻した加持は稲妻の閃光がまたたく鉛色の空を見上げながら、深く暗いEvaを巡る事情を十分に知らされず任務遂行に尽くすミサトの身を案じていた。

■■■

 NERV本部の中、特にジオフロントよりもさらに下にある地中構造物・セントラルドグマを完全に承知している者は、ごく一部の上層部関係者と保安担当者だけである。ここは使徒・アダムを幽閉したシャフト基部とその周辺のターミナルドグマと呼ばれる最重要区画を核にした実験及びエネルギー関連施設が配置されているのだが、ピラミッド状の管理棟よりも広い空間を持つそれには、用途の定かではない部屋がいくつも存在している。そのひとつ、影で「暗室」と呼称されている部屋でミサトは、問責を受けようとしていた。

「ここは・・・えッ?!」

 昨晩シンジに犯されて少なからぬショックを受けた彼女はマンションへの帰宅をためらい、時々使うビジネスホテルに泊り込んだ。そして朝、出勤した所を数人の黒服姿の監察部員によって止められ、彼らとエレベーターに乗ったところで気を失ったのだ。気が付いた彼女は真っ暗闇の辺りを見回し、そして自分が後ろ手に拘束された上に全裸で転がっていることにア然とする。

「気が付いたかね、葛城三佐」

 どこかにあるスピーカーから聞き覚えのある落ち着いた男の声がした。ミサトはギョッとして、その声の主に向かって叫ぶ。

「副司令!これは、どういうことですかッ?説明してください!」
「ここでは、キミに質問は許されない」

 淡々と話すのは副司令・冬月コウゾウであった。

「本来、監察部は総司令の直属組織だが、碇司令が所用で不在のために私が代理を許された」

 明りひとつない暗闇の中で、ミサトは周囲をグルグルと見回した。しかし声のする方向は特定出来ず、まるで四方から見られているような錯覚に陥った彼女は困惑した表情で不安に駆られる。その姿を冬月はどこかでモニターしているのだろう。

「真っ暗で怖いかね、葛城三佐」
「これはッ、問責なんですか?」

 自分の様子を伺う彼の冷たいまでに落ち着いた声に、今まで問責されたことのないミサトは恐怖を感じて声のトーンを高める。その瞬間、部屋が急に明るくなって、彼女は眩さに目を閉じた。そしてゆっくりと開いた彼女は更に驚き叫んだ。

「ええッ!?何ッ」

 光の反射している室内には上下左右のそこかしこに自分の姿があった。まるで万華鏡の中に閉じ込められたようだ。裸の自分に取り囲まれたミサトは混乱し、激しい動悸を感じる。

「脈拍がだいぶ上がっているようだね、まぁいい、キミは体力的には丈夫なようだし既往症も無いから、そろそろ始めようか・・・」
「副司令!待って下さいッ、こんなコトって・・・」
「繰り返すが葛城三佐、キミには質問に答えること以外許されていない、さて…」

 狼狽するミサトの声を無視して、冬月は問責を開始した。ミサトを取り囲む自身の裸体が、いきなり加持リョウジの笑顔に変わると、彼女は目を見開き声を失した。

「キミの記憶中枢から採取したサンプルを分析させてもらったよ、何、延髄からミクロン単位の特殊カテーテルを入れただけだから大したことはない」

 恐らく彼女を電気ショックか何かでオトした後で、顕微鏡レベルの精密外科的処置により脳組織の記憶分析をしたのだろう。Evaの開発運用を行うここでは、そんな生体工学的技術行為は造作もないことだった。

「このところの弐号機パイロットの不調について葛城三佐、キミの個人的事情が影響しているというのは事実か?」
「それは・・・」

 ビデオモニターのプレイバックを見ているように、延々と声のない加持の笑顔がミサトを取り囲む中で、冬月の核心をつく質問にミサトは口篭もる。記憶というゴマかしようのない証拠を握られて、それをあえて自身の口で認めろという非情さに彼女は悪寒を覚えた。

「返事がないというのは、身に覚えがないということかね葛城三佐、ならば・・・」

 記憶を解析したという映像が切り替わる。ミサトは驚愕し、叫び、体をよじった。彼女の周囲に展開するものは、彼女の中に熱いものを埋めながら彼女を抱きしめて動く加持の姿。ミサト自分の視線として記憶として残る行為の最中の映像に羞恥の余りたちまち全身を赤熱させた彼女は、途端に髪を振り乱して絶叫する。

「いやァァッ!やめてッ!やめてくださいッ!」
「自ら保護者を買って出たキミが、いくらプライベートとはいえパイロットの不信を生むような行動はいかがなものかね」
「フ、副司令ッ!こんな、ヒドいッ!」
「今の発言は葛城三佐、上官に対する反抗的態度とみなしてもよいのか?」
「そんな・・・」
「それに、どうもキミの私生活は保護者として不適格と考えざるを得ないようだが」

 映像は自分の胸に顔を埋めるシンジを掻き抱く視点へと変わった。戦慄と羞恥で全身に汗を滲ませるミサトは狂ったように頭を振り乱しながら泣き出す。

「こんなッ!こんなのッ、やァァッ!オォォ・・・」
「まさかとは思ったが、作戦部チーフがこんな乱行に耽っているとは」
「ヒィィ・・・」
「クダらん真似をしたものだな、反省したまえ葛城三佐!」

 シンジの硬直したものを今、含もうとしている有り様をこんなやり方で思い出させられたミサトの脳裏は真っ白にかすれ、彼女の泣き声が悲鳴とも荒い呼吸ともつかぬものに変わった。その途端に耐えられなくなったのか、程なく枷をはめられたまま体を横転させた彼女はそこで失神した。

「いかに独り身とはいえ、相手はまだ中学生だぞ・・・悪趣味にもほどがある!」

 元大学講師でNERV副司令、不気味で腹の読めぬ総司令・碇ゲンドウを除けば所内きってのカタブツと言われている冬月は、映像を止め照明を点けた仕置きの場をモニター越しに望む別室で、生々しい肉の絡みを見せ付けられ年甲斐もなく心の隅にモヤモヤと沸き出そうとしている男の欲望を否定するように誰に言うでもなく厳しい声を吐いていた。

「かと言って今、彼女を外すという訳にもいかんしな、適切に『処置』した上で葛城三佐は解放したまえ」

 部屋の背後で無表情に指示を待つ数名の黒ずくめの男たちに背中を向けたまま、冬月は彼らにそう命じた。

■■■

 浴室に入ったアスカはシャワーヘッドを壁面のホルダーに固定したまま、栓をひねって湯しぶきを頭から全身に浴びる。

「あのシンジと、こんなことになっちゃうなんて・・・いいのかナ」

 毎日、顔を合わせる度に見下げた言葉を投げ付け続けてきた少年。いつも煮え切らない態度を取り、何かと言えば謝ってばかりいる少年。それに比べればドイツで彼女の渡航手続きに立ち会って以来、大人の懐の深さを見せ付けさせた加持リョウジの何と頼り甲斐のあったことか。思い直すのならば今しかないと迷う彼女だが、本当に少年が嫌いだった訳でもなかった。

「でも、さ・・・アイツも優しいよね」

 どんなに口撃しても時に手が出ても、懲りもせずにパートナーを続ける少年。自分からカンシャクを爆発させて彼女を拒絶したことは1度も無かった。ミサト同様にマンションでは彼が年頃だというのに、薄物1枚に短いパンツやTシャツだけというあられもない格好をすることがあったアスカだが、時に妙な視線を感じることはあっても、チョッカイを出してくることは無かった。無論、腕力勝負になれば貧弱な少年を叩きのめす自信はあったが。

「あたし、何でアイツを挑発してたんだろう・・・ホントは、気を引きたかったんじゃ…」

 心の奥に芽生えていた自分の乙女心に気付いたアスカは、耳まで真っ赤になる。その時、背後の扉が開き、振り返る間もなく彼女は背後からシンジに抱きしめられた。

「アスカ・・・」
「な、ちょっと、嫌ッ!」

 いつものプライドの鎧を脱いだ無防備な14歳の少女に戻っていたアスカは、裸の背中にいきなり少年の体を押し付けられて叫ぶ。両肘でもがき、腰を振って振り解こうとする彼女の尻の間に、硬く熱いものが突き付けられたのを感じた彼女は、さらに密着した背中に感じる少年の胸板に彼が既に何も着けていないことを知り混乱した。

「シンジッたら!やめてッ」
「フッ、今さら恥ずかしがるなよ」
「エッ?」

 落ち着き払った声が違う。そう、背中に感じる胸板の感じも違う。いつものシンジじゃない。そう言えばシャワーを浴びる前の彼の顔付きは妙に大人びていた。本当に彼は碇シンジなの? アスカが困惑する中、抱き付いたシンジの両手が後から彼女の両胸をワシ掴みにした。

「やァッ!そんなに強く掴んだら痛いッ、乱暴にしないでよぉ」

 濡れた髪を振り乱しながら、胸を掴む彼の手首を握って半泣きのアスカ。普段の彼女なら考えられないことだったが、心に鎧を着直す余裕が全くない。心も体も曝け出した状態では、彼女も14歳の普通の少女でしかなかった。そして、一方のシンジは獣の本性に覚醒してしまっている。

「自分でも、こんなことしてるんだろ」
「い・・・やらしいッ、シンジのバカぁ・・・あンッ」

 まだ育ちきってはいないが掌にすくいあげられるだけの嵩のある左右のやわらかなふくらみを、捧げ持ち、掴み上げるシンジ。涙にかすむ眼下に掴まれて形を変えた胸の先が突き上げられたアスカの中に行為を拒む理性とは別のせつないものが込み上げてくると、キュッキュッとリズムを付けて絞られる胸の先のピンク色の尖りが赤みを増して鋭く硬化する。そこから甘い感覚が下腹部に向かってジワジワと降り始めると、彼女は思わず小さな喘ぎを洩らした。

「いつも自分でしてるから、ホラ、すぐに立っちゃった」
「そんなトコ、つまんじゃイヤよぉ!んハァッ」

 卑猥な言葉を吐きながら、ふくらみを絞るシンジの指先が尖りを摘む。降り注ぐシャワーの水滴がそこに当り、痛痒さにも似た心地良さにアスカは呼吸を乱した。シンジは後髪の上から首筋に唇を押し当てて強く吸った。そして彼の右手が胸から下腹部に降りる。シャワーに濡れて膨らんだ茂みの上から、恥丘に被せるように掌が当てがわれ、中指の先がプクッと脂肪のついた門扉の中に沈む。

「ベトベトじゃないか、アスカのスケベ・・・」
「は、恥ずかしいよぉ、あぁン」

 体を滑る湯の流れがそこに集まるにもかかわらず、シンジの2回の愛撫でそこはもう潤みにまみれていた。早熟な少女のものは大人のおんなのように濃い粘りをシンジの指先に絡めた。彼は揃えた右手の指先を下にずらして、3本の指で門扉を押し開き、内側の薄いカーテンの先端にある小さな粒を捉えた。

「コレ、なぁ〜んだ?」
「それ、ダメぇぇぇ!」

 左右に大きく首を振り、腰を震わせてシンジの淫攻に喘ぐアスカ。矢継ぎ早な彼の手技に、拒むアスカの体はもう理性では押し止められない。アスカがどんどん融けていく。小粒を指先で転がされた彼女は甲高く叫んだ。

「ンぁあッ!ひぁぁッ」

 アスカは両手を壁に突いて腰を突き出している。シンジはほどけた髪が貼り付き湯の流れる彼女の背中に唇を這わせながら、下を向いた彼女の乳房を両手を弄び、直立した分身を潤んだ谷間に後から押し当てる。育ち盛りの体に宿ったばかりのおんなの本能が初めて男の手で目覚めさせられて、まだ幼いながらも精一杯に自己主張する。アスカは体の中から湧き出す快感に自分を失っていた。

「シンジッ!変になっちゃうよぉ」

 股間に密着していた熱い棒の先が、扉の入口を割る。シンジは彼女の腰を両手で抱えると、自らの腰を少し落として角度を付ける。膨れた先端がまだ狭いアスカの窪みに掛かり、そして…。

「あああッ!それ入れちゃダメぇッ!」
「もう、入ってるよ・・・」
「あうぅッ、痛ッ、突いちゃやぁッ!」

 まだ受け入れ馴れていない彼女の女芯は、十分に熱く潤んでいても狭く固い。初めての閂通しでは無かったし、指遊びなら何度もしたが、久々に生身を受け入れたそこは軋み、広げられた粘膜の痛みにアスカは声を震わせる。かつて家庭教師の青年に悪戯同然で遠慮がちに、ただ入れられた初めての時よりも腰を突く今のシンジの行為の方が刺激は強かった。更に先端がより深く粘膜の奥に届くと、尾底骨から脊椎、そして頭と爪先に向かって今までに感じたことの無い落雷のような閃きが駆ける。

「ああッ!? イイのッ!それッ」

 叫び、締め付ける彼女の中で動くシンジも高まりを迎えていた。彼がそれに堪えられなくなる前に分身を抜こうと腰を引くと、アスカがそれを制止する。生まれて初めて芯の奥に感じる痛みを越えたエクスタシーを前に、感じやすい彼女は本能的に貧欲になった。

「そのままッ、突いてぇッ!」
「でも・・・」
「大丈夫なのッ、だから、そのままッ!」

 中に放つリスクは奥手のシンジも知っていたし、獣と化した彼の本性も全く節操を失っていた訳ではない。むしろ情交における冷静さは、今、豹変している状態のシンジが勝っていた。だから彼は腰を引いたのだったが、肉体的な刺激への幼さゆえの敏感さばかりはどうすることも出来ない。シャワーに打たれ、甲高く登り詰めるアスカの女芯の激しい痺れに囚われたシンジの分身は咥え込まれたまま、ついに炸裂してしまった。

「あッ、あ!あヒッ、い・・・ちゃうゥ!」
「おぅ!」

 シンジの知らない、生々しいまでの少女の本性を曝け出したアスカの体を感じながら彼は息を詰め、熱いしぶきを彼女の中に放つ。彼女もまた、自分の知らない少年の荒々しさを体の中に受け止めた。何度か繰り返された律動の後、2人は重なったままゆっくりと浴室の床に崩れる。引き抜いたシンジの下で、彼の方に欲情で紅潮した体を向けたアスカがまだ息を乱しながらささやくと、四つん這いで彼女を見つめるシンジが薄笑いを浮かべながら答えた。

「はぁ・・・私ッ、イッちゃったんだね」
「この、インラン娘」
「アンタだって・・・ホントはこんなにエッチなんだから」
「だからインランな女の子が好きなのさ」

 言った途端にその口でアスカの唇を塞いだシンジが再び、痺れの余韻の残る彼女の体に愛撫を加え始めると、壁にもたれてシンジの背中に腕を回してより激しくキスに応じる彼女。ここ数日の出来事に凝縮された彼女の心と体の渇望感を満たすには、1度の交わりでは済みそうになかった。

■■■

 結局、シンジとアスカ、それにミサトの3人がマンションの部屋で再び顔を合わせたのは翌日の夜だった。ミサトはここ数日の間の出来事に気持ちをすり減らしている。加えて前日の朝、監察部員に連行された時から今日の昼間に解放されるまでの記憶がすっかり欠落していることが余計に彼女の心を圧迫していた。ひどくショッキングなことが自分の身の上にあったような気がする。そのプレッシャーが彼女の情緒を不安定にした。

「アンタたち、学校にはちゃんと出席しなさいよね」

 居間で床に横になりながらテレビを観ているアスカと、ヘッドホンステレオを聞きながらソファに寝そべって雑誌を読んでいたシンジ。そこにゲッソリとやつれた表情で帰宅したミサトは疲れた声で、前日、2人揃って朝から勝手に早退したことを叱責する。

「ハァイ、ったく、どこでスパイしてるんだか・・・」

 テレビに視線を向けたまま、彼女の顔も見ずに気の無い適当な返事をしたアスカに、カチンときたミサトがツカツカと歩み寄ってテレビのスイッチを切る。

「なぁにすんのよぉ」
「アスカッ、人の話はまじめに聞きなさいよ!仮にもアタシはアンタの保護者なんだから」
「誰も頼んでないのに・・・」

 不満そうに口を尖らせるアスカがきつい口調で睨みつけて説教を続けようとしたミサトに、ボソッとへらず口を叩いた途端、ミサトの右手が彼女の左頬を思いっきり平手打ちした。

「キャッ!何よッ」
「子供のクセに口ごたえするなッ!だいたい誰のお陰で私がこんなにシンドい目に遭ってると思ってんのよ!ホンっとに手が掛かるったらありゃしない、少しはシンジ君を見習いなさいよ!」

 いきなり叩かれてキッとミサトを睨むアスカに向かって、彼女はつい、個人的な不満をぶつけてしまった。居候としては手の掛からないシンジと比べれば、自己主張の強く気難しいアスカは気分的に荷が重い。保護者として言ってはいけないことを口にしてしまいハッと我に返ったミサトだったが、アスカの表情はみるみる険しくなった。

「フンッ!そういうこと?保護者ヅラが聞いてあきれるわッ、どうせシンジの方がカワイイでしょうよ!」
「あ、アスカ・・・」
「上手く弐号機を動かせなくって悪うごさいましたッ!何さッ、加持さんとヨリが戻ったからって、強気になっちゃって、いい大人が馬鹿ぢゃないのッ!」

 取り繕おうと言葉に詰まるミサトに大声で悪態をついたアスカは、肩をイカらせドカドカと足を踏み鳴らして自分の寝床に消えた。何事かとヘッドホンを外してそれを傍観するシンジ。

「ホント、参ったワ・・・もう、疲れた」

 ミサトはガックリとその場に座り込んで両手で頭を抱える。心寂しい者同士が寄り添うはずだった擬似家族の崩壊は、この時から既に始まっていたのかもしれない。しかし目の前のおんなたちが追い詰められて行くその中でも、シンジの中で覚醒した魔性の成長は続く。

 


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