作 / Sa−toshi ・ 画 / 森里 涼


マヤ・参 〜 剥がれたリボン


 既に四季を喪失して久しい日本。だが、モンスーン気候の雨季に相当するとでも言うのだろうか、本格的な真夏の前には梅雨らしき雨の続く時期が半月ほどある。その短い梅雨も終わろうかという7月も半ばの昼下がり。

「ねぇ、マヤ」
「ん?何」

 夏休みまで、あと1週間余り。定期テストも終わり、クラスの雰囲気もどこか重荷が外れてウワついた明るさの漂う文聖女子学院高等部校舎の中。担任から頼まれて、印刷室で1学期の終業式当日に配布する「夏休みの注意」のコピーを取っていた伊吹マヤは、コピー機の排熱を逃すために開け放たれた廊下を隔てるドアの外からクラスメイトの加賀ミキに声を掛けられた。

「あのさぁ、一生のお願いがあるんだけど」
「ミキの一生のお願いって、いつもじゃない?」

 少し赤みがかった濃い栗毛のショートヘアの襟足を後に流しているミキは、その少年のようなスリムな風貌と同じようにカラッとした性格の娘である。彼女は中等部以来のマヤの友達で、高等部でも2年の今のクラスまでずっと同組だった。マヤは彼女が両手を合わせて拝む、いつもの仕種をわざと無視してコピー機から目を離さずに「またか」という感じで彼女に尋ねる。「一生のお願い」は出会った頃から彼女の口癖だった。

「今度は何のお願いなの?まさか今から夏休みの宿題の相談」
「あ、それもあったか…」
「いくら友達だからって、いまからそれじゃ見捨てるわよ」
「ううん、今回はそうじゃないの」

 昔からの付き合いだとは言え、こと勉強に関しては生真面目なマヤは簡単に妥協はしない。呆れたと言うような声で淡々と答えながらコピーを取り続ける彼女の脇から、上体をコピー機とマヤの間にニュッと割り込ませたミキは、お願いポーズのままマヤの顔をジッと見つめて言った。

「急で悪いんだけど、今日バイト代わってくんない?」
「へ?」
「もう、今日代わりの子に頼んじゃったって店長に言っちゃったんだもん、ね、お願い!」

 いくら口癖でも予告もなしにバイトを交替してくれと言われて、はいそうですかと答えられる者はいないだろう。マヤは一瞬キョトンとしたように目を見開き、次いでミキに向かって断りの言葉をまくし立てた。

「何、言ってんのよ!こっちだって都合ってものがあるんですからね、急に言われたって困るわ」
「都合って、何?」
「何って…それは」

 ミキはマヤの生真面目な性格を見通して、お願いする側とは思えない素早い突っ込みでマヤに言い寄る。実際、放課後には何も予定のないマヤは言葉に詰まった。

「去年、一緒にやったから大丈夫だよ、マヤなら出来るって」
「そんな、急にいわれても」

 マヤは彼女に付き合わされる形で、去年の高校1年の夏休みに3週間ほどファーストフードのアルバイトをしている。2人の通う学校は成績や素行には厳しかったが、生徒の自主責任を尊重する校風からきちんと届け出られる業種のアルバイトには比較的寛容だったので、ミキはそのままアルバイトを続けていたのだ。無論、成績を維持するために友達の少なからぬ支援を受けてはいたが。

「今日、どうしても外せない用事が出来ちゃって」
「何よ、用事って」
「ん〜、言わなくてもマヤなら分かってくれるよねぇ」
「ホント、しょうがないんだからぁ!」

 おそらくは男友達とのデートでもあるのだろう。さすがにそれに突っ込みを入れるほどマヤも無粋ではない。それにマヤは彼女には何故か気を許せる安心感を昔から持っていた。時にこんな勝手なこともする彼女だが、どちらかと言えば内向的なマヤを彼女は何かと精神的に支えてくれる存在だった。自分が2ヶ月程前に恥辱にまみれた悲惨な体験をして目一杯落ち込んだ時も、彼女は立ち入ったことは一切聞かずに慰めてくれたのだ。

「用事があったらどうするつもりだったの」
「大丈夫、私の勘って当たるんだ」

 両手を腰に当て、小首を傾げながら難しい顔をしているマヤに、返事が無くてもOKという感触をつかんだミキは、いきなりマヤの頬にキスをすると、短く詰めた制服のスカートを翻して廊下をバタバタと走って行ってしまう。

「お願いね〜!」
「あ〜ぁ、ホント勝手なんだから」

 後ろも振り向かずに片手を上げるミキに、ため息をついて苦笑いするマヤ。その時、脇のコピー機が騒々しいアラーム音を発したかと思うと、ガツッという音と共に止まってしまった。

「なぁに?こんな時に」

 操作盤の小さな液晶画面を見ながら少し苛立たしげにパンとコピー機のボディを軽く叩くマヤ。手前のアクセスパネルを開くと、紙送り機構のところでグシャグシャに紙が詰まってしまっていた。噛み込んだ紙片がなかなか取れない。

「あ〜ぁ、ツイてない」

 嘆くマヤ。思えばそれは、その日彼女を襲う2度目の不運の予兆だった。

■■■

 加賀ミキが昨年からアルバイトを続けているファーストフード店は、学校と駅を結ぶバスのルートからわずかに外れた郊外に通じるバイパス道路沿いにある。駅から歩いても5、6分の距離ではあったが、駅の直近には既に乗降客や繁華街の人通り相手の老舗がいくつも軒を構えており、十分な駐車場を備えた後発のこの店の顧客層は、もっぱら車を使う人々か近隣の住宅地の住民だった。

「あれ?前に居たよねキミ」
「ハイ、去年の夏にちょっとだけお世話になりました」

 西の山沿いに入道雲が沸き立ち、夕方というにはまだ明るい午後5時過ぎ、マヤは店の裏口から事務室に顔を出す。去年と同じ、人の良さそうなマイホームパパという言葉がハマッてしまう30代半ばの店長が細い目元をニコニコさせて彼女を出迎えた。

「店のメニューで悪いけど、はい」
「あ、コレ好きなんですぅ」

 店長のおごりでレモンスカッシュを出してもらったマヤは既に学校の制服から、前衣の合せ目に縁飾りの取られた白いブラウスに胸元が大きく開いたサーモンピンクのハイウェストのミニジャケットを組み合わせた店の制服に着替えて、やはり襟元のアクセントになっている大きめの赤い蝶リボンを締め直しながら店長から仕事の説明を受けている。去年、ミキに付き合わされた時もそうだったが、この制服を着てしまうと何故か張り切って仕事をする気になってしまう。時給以上に、最近はこの制服が目当てでアルバイトを申し込む女子高生が多いと聞いた評判もウソではないようだ。

「仕事の手順は去年とほとんど同じだから、大丈夫だよ」
「はい、何かこの格好しちゃうと、バリバリ出来ちゃう気にさせられるんですよね」
「うん、良く似合ってるよ」

 足元の白いスニーカーとセットになっているミディアムルーズソックスと、ちょっと開いたスカートの短い裾が気にはなるが、生真面目な彼女もやはり女子高生なのだ。こういう可愛い制服を着て誉められると悪い気はしない。

「じゃあ、夕方に上がる人がいるので、カウンターに入ってくれるかな?」
「はい、わかりました」

 頭の上に店のイメージカラーでもある制服と同じツートンカラーの三角帽子を被ってピンで止めると、マヤは紙コップのレモンスカッシュを一気に飲み干して、店のカウンターに立つために事務室を出た。調理室からは雑多なメニューの油っ気の混じった匂いが作業通路に漂ってくる。客の立ち入るカウンターの外側のスペースとの間にはエアカーテンがあるので、その匂いが客に悪い印象を与えることはまず無いが、その匂いのおかげでマヤの回転の早い頭の中に約1年振りの仕事の感覚が確実に戻って来た。

「いらっしゃいませェ!こちらで御注文をどうぞ」

 身勝手な友達の唐突な頼みに多少の苛立ちはあったマヤだったが、にこやかな営業スマイルも板についた、その表情と共に少し前までの割り切れない気持ちはどこかに消し飛んでしまっている。ものの10分としないうちに、彼女はすっかり制服も体になじんだファーストフードの女子店員になっていた。

「御注文を確認させて頂きます、チキンバーガー、セットで2つ…」

 客の方を見ながら笑顔を絶やさずに注文を口頭で復唱しつつ、片手で手元の注文入金端末に打ち込んでいく。昨夏の彼女を知らない若い男子アルバイトが、マヤの方をチラチラ見ながらコソコソと耳打ちし合っている。マヤ自身は決して男性の気を惹こうなどという気持ちは持っていなかったが、その時の彼女は十分に華を持っていた。それが不運を招こうなどとは思いも寄らなかっただろう。しかし…。

「マヤちゃん、悪いけど裏の空き箱片付けといてくれる?」

 その日は平日ということもあったが、夕方の交通ラッシュの時間帯を過ぎてしまうと客足が途絶えた。カウンターの外の飲食スペースで椅子やテーブルの位置を整理している店長から口頭で頼まれたマヤは、灰色の作業服を来た若いドライバーのような風貌の男性客の注文を取り終わるとカウンターから下がり、食材を搬入する裏手のバックヤードの片付けに回った。ファーストフード店のメニューは、みな冷凍食品として箱に梱包されて搬入される。その空き箱を潰して資源回収業者に引き渡すためのコンテナに詰め込むのは、大抵は新人アルバイトの仕事だった。いかに経験者とは言え、今日のマヤは店一番の新米には違いない。

「あれっ?」

 屋外のトラックスペースの横で、しばらくダンボールや再生樹脂の梱包パッケージを潰しながら再資源コンテナに振り分けていたマヤは、すっかり陽が暮れて暗くなった空から、冷たいものがパラパラと頭や肩に掛かるのに気付いた。そしてアッという間にそれは大粒の雨となってシャワーのように振り注ぎ始める。

「キャア、たぁいへん!」

 再生樹脂はともかく、ダンボールは多量の雨にさらされると溶けてドロドロになってしまう。潰しかけの箱を庇(ひさし)の下に除け、再資源コンテナの上にビニールシートを被せなければならない。マヤは時々稲妻が走りパァッと明るくなる豪雨の空の下、ずぶ濡れになりながらその作業をこなした。

「あ〜ん、もぅグシャグシャ…」

  ダンボールはドロドロにせずに済んだが、彼女は服を着たままシャワーを浴びたような状態だった。可愛らしいフレアのミニスカートも多量の雨を吸って黒ずみ、裾から滴をしたたらせている。彼女は周囲を気にしながら裾を少しまくり上げて両手で掴んで雑巾のように絞ると、生地が吸った雨水がビシャビシャと流れ落ちた。腰の後ろの大きな飾りリボンも形を崩して垂れ下がってしまっている。

 「やだァ〜」

 最悪なのは白いブラウスが見事に透けてしまっていることだった。生地が肌に貼り付き、遠目にも下に着けた白いブラの輪郭が刺繍の形まではっきりとわかるような有り様に、マヤは悲鳴とも嘆きともつかぬ声を上げてバックヤードから店内に通じる観音ドアの中に体の前を両手で隠し抱くようにして駆け込む。店内の空調の冷気が濡れた彼女の体を服の上から冷やす。光量の足りない通路の蛍光燈の下で寒気も感じて自分の体を強く抱きしめたマヤは、腰の辺りを見下ろしてハッとした。雨水を吸って黒ずんだスカートは腰の周りに張り付き、生地を通してパンティのラインをクッキリと浮き出させてしまっている。

「やぁん…もぅ」

 誰も見ていないかどうか、やや前屈みになって前髪から滴をしたたらせながら辺りを伺うマヤ。次の瞬間、彼女は背後からいきなり口を塞がれ、腰の辺りから腕ごと強く抱き付かれる感じで強引に通路の横手にある雑具倉庫に引き摺り込まれた。マヤには荷物が通路を通ることを考慮して設けられた片開きのスライドドアが、その時に限って音も立てずに閉まるように感じられた。

■■■

 雑具倉庫は10畳ほどの広さがあったが、小さなスタンドに使うような蛍光燈が天井に1つ造り付けられているだけで、天井も壁も床も打ちっ放しのコンクリートがムキ出しのホコリ臭い部屋である。その小さな蛍光燈も今はついておらず、出入り口の上にある非常口表示灯の薄明かりが、部屋の中に畳んで押し込まれた食材搬送用の鉄柵のついた台車や、細々した備品を入れて積まれたダンボール箱などをぼんやりと照らし出している。

「ハァ、ハァッ」

 荒い息遣いがマヤの耳に届く。油が染み込みホコリと混じってイヤな匂いを放つ軍手をはめた男の左の掌が、彼女の口を塞いでいる。マヤが首を左右に振ってその手を解こうとすると、ゴワゴワした感触が彼女の口の周りに伝わった。無論、力強い男の手から逃れることは出来ない。呼吸をすることも辛い状態で何度も体をよじって抵抗しているうちに、マヤは息が切れて体から力が抜けそうになった。

「ん〜ッ!」

 その時を男は逃さず、自分で用意していたのか、それとも倉庫の備品を失敬したのか、いずれにせよ鼻を塞いで彼女を失神させるようなヘマはせずに、素早く冷静にガムテープで彼女の口をピッタリと覆う。強力な糊のヒリヒリとする刺激を口の周りから頬にかけて感じながら声を封じられたマヤは、生まれてこのかた経験したことのない最悪の事態を予感する。全身の毛穴が開き、鳥肌が立つような恐怖に悪寒を感じた彼女は、体を前後左右に狂わんばかりに動かそうとした。男は口を塞ぐ必要の無くなった左手と右手の両方で彼女の体を両側からガッシリと抱き抱える。腕の位置から見て背後の男の背格好はさほど大きくはなく、肩の高さもマヤよりひと回り高いかどうかという感じではあるが、非常灯の薄明かりの中で彼女を捕まえる腕は、灰色の作業服の袖の下で硬い筋肉の張りをブラウスの半袖から出た細いマヤの両腕の肌ににしっかりと伝えている。

(この男の体力からは、逃げられないッ…)

 両足を後ろに蹴り付けて、何度か男の脛や膝の辺りを直撃させたはずなのに男は悲鳴も上げず、まるで彼女が体力気力を消耗して弱って行くのを待っているかのようだ。見開かれたマヤの目からは涙が溢れ出し、すでに濡れた髪から染み出した雨水と混ざって顔中がグシャグシャになっている。抵抗で息が上がり、青ざめていた頬は熱く紅潮し、雨に打たれて冷えたはずの体も汗ばみ、思春期の少女独特の淡い体臭が狭い室内に漂い始めると、男は時折ツバを飲み込みながらハァハァと大きな息遣いだけを立てつつ、いよいよ本能的な行動を開始した。

(うぐッ!)

男は自分の体に体重を乗せて、マヤの体を部屋の片隅、部屋の入り口から見ると折り畳まれた台車の陰に入るような所のコンクリートの壁面に思いっきり押さえ付ける。背面から体重を掛けられて胸から腹を圧迫され、苦しさにマヤの体から再び力が抜けた瞬間を見計らって、男は左右の手で彼女の両手首を掴むと、そのまま強引に後ろ手に回しガムテープでグルグル巻きにして彼女から腕の自由も奪った。更に、薄汚れたドタ靴を履いた作業ズボンの男の両足が後から内股を膝で割る形でマヤの両足を開くと、マヤは男の腰の上に尻から抱え込まれるような格好になった。そして力強い両手が、更に彼女の両モモを掴んでグィッと開く。

(痛ッ…)

 柔らかなモモ肉を男の手でワシ掴みにされて、額を壁にゴリゴリ摩り付けるようにして首を振るマヤ。そんな事には構わず、汚れた軍手に包まれた男の両手が、彼女の両脇から壁と体の間に差し込まれる。ゴワゴワとした男の掌が濡れたブラウスの上から彼女の左右の胸のふくらみをグイグイと揉みしだくが、肋骨の上の愛らしいふくらみは、その荒っぽい愛撫を充分に受け止めるだけの豊かなボリュームにはまだ少し足りなかった。

「ムゥゥッ!」

 嫌悪と力任せに乳房をまさぐられる苦痛に、マヤはガムテープの下で泣き叫ぶ。しかし、ここに引き摺り込まれてから、いったいどのくらいの時間が経ったのかもわからない。その時間が長いのか短いのか、とにかくその間、この部屋には誰も入る気配が無く、ドアを隔てた廊下を歩く人もほとんどいないという不運な状況だけが過ぎて行く。

「アフゥッ!?」

 水を吸って固くなったブラのカップが、マヤの意志とは無関係に男の横暴な行為で硬く膨らんだ乳首を擦ると、単なる痛みとは違う感覚が胸の中心から広がり出した。痛痒い、胸の先を火であぶられるようなイライラした快感。マヤは2ヶ月前の中央線の車内で受けた恥辱をはっきりと思い出して、必死に体を揺すり、伸び上がり、男の手から逃げようとした。たが、抵抗すればするほど、男の息遣いは荒さを増し、汗ばんだその鼻面を襟元に押し付けて彼女の体臭を味わっている。そしてその抵抗は確実に彼女の体力を奪っていく。

(何で!何で、こんな時に私の体はおかしくなっちゃうのォ!?)

 心にヤスリを掛けられるような苦痛を感じているのに、脇腹から伸びた男の手が下から捧げ持つように彼女の胸を掴み、そのまま太い親指と人差し指で先端のしこりを摘まんでシゴくと、スカートから染み込んだ雨水で冷たく冷えた下半身を覆うパンティの股間のあたりが、ジンジンと熱くなってくる。やがて足を開かれている股の付け根の奥底から潤みが染み出すのが、マヤ自身にはっきりとわかった。

「ウゥゥ…」

 男は低く唸ると、マヤのブラウスの襟元を飾るリボンを右手で剥ぎ取る。それを床に投げ捨てると、次は両手でボタンの掛かったブラウスの前衣をそのまま左右に剥く。ブツブツとボタンが弾け飛んで床に散った。ゴワゴワとした汚れた軍手をはめた両手が、ブラのカップの下から彼女の両胸の愛らしいふくらみを掴み出し、まるでついたモチのように捏ね回す。

(そんな乱暴にしたらァッ!)

 擦れた胸の先が軍手の粗い繊維で一層刺激されて充血し、男の太い指がそこを直に摘んで引っ張ると、マヤの狭間から染み出す潤みの量が増して陰裂から会陰、その後の菊門までも浸していく。マヤは男の腰の上で仰け反り、抵抗する理性と快感に反応する本能に開かれ押さえられた両足を突っ張らせた。

(イヤッ!嫌だぁッ!)

 男の本能に協調を見せる自分の体が憎らしかった。壁と男の体との間で殆ど自由を奪われたまま体を震わせ、もはや自分自身の体と戦っているマヤ。男は自己矛盾に陥って混乱している彼女を尻目に上体で彼女の体をしっかり壁に押さえ込みながら、胸から放した両手で水を吸った重いフレアスカートの裾を引き上げた。彼女の太股から白いパンティに覆われた尻までのなだらかな白いカーブが非常灯の薄明かりの下で艶やかに光る。そして男の手は、托し上げられたスカートの下に差し入れられると白く薄いパンティを力任せにビッと引き裂く。パンティはウエストや股ぐりのゴムの所、そして下腹部を覆う股布の一部を残して底の布地の大半が剥ぎ取られ、マヤは破れたパンティを履いたまま尻を露出する格好になった。

(もうッ、もうやめてッ!お願いだから…)

 首を回して泣き濡れた顔で男の方を横目に見て、せめて懇願しようとするマヤだが、男は上体でガッシリと彼女の体を抱え込んだまま、彼女の顔など見ようともしない。時々濡れた髪に顔を埋めて呼吸を乱しているだけだ。そして男の両手が前から内股に沿ってマヤの両ももを抱え、より大きく外側にグッと開こうとする。上体には圧し掛かるように体重を掛けられて、マヤの体が少しずつ沈む。

(イヤァッ!ダメェッ!あぁッ、神様…)

 男の行為のフィナーレが目指すことは、いかに純情なマヤでも充分にわかっていた。男は左手の肘から先を、開いた彼女のももの上に載せて渾身の体重を掛けつつ、右手は自分のズボンの股間に回してチャックからイキリたったコン棒を掴み出す。男の荒い息にかすかに声が混じり始め、彼の興奮も絶頂に向かおうとしているようだ。前回はそれでも器具を半分埋められるだけで済んだが、この状況ではもう男の持ち物を自分の女芯の奥までネジ込まれることは疑いようが無い。

「ヌウゥゥ〜ッ!!」

 マヤは最悪の予感に顎を天井に向けてうめき続ける。だが、男は右手に掴んだものの鈴口に溢れ出した先走りの粘り気を絡めた人指し指と中指を、彼女の後の菊門にまず這わせた。そして2本の指の腹でグリグリと円を描くようにそこを揉み込む。既にマヤ自身から溢れたものと一緒にベトベトになった菊門からニチャニチャと糸を引きそうな音が漏れる。予期せぬ男の行為と、尻の奥をもてあそばれる嫌悪感にマヤは腰を振って抵抗しようとするが、かえってその動きで男の指先がその中に埋まりかけてしまう。そして男の指が外れると、続けて熱い筒先が尾てい骨の下の辺りから強引に開かれたマヤの尻の割れ目に沿って這う。押し当てられたものへの菊門の抵抗感がマヤの脊椎を伝う。その時、男が小さく口走った。

「尻ッ開けよ、このッ」

 両の太ももを抱える男の手が、ももの下側を掴んでさらに引っ張る。更に男は腰の上に乗せたマヤの尻肉を広げるように動いた。そして男が右手で掴んだ熱い筒は…。

「アグッ、ウゥゥ!!…」

 マヤは予想外の尻の底を襲った衝撃に泣き濡れた瞳をカッと見開いた。潤んだ股間の芯の少し後ろ、尻肉の狭間の狭いすぼまりを襲う言い知れぬ違和感と焼けるような痛み。続いてそこから全身に広がる、初めてアヌスが覚える快感。容赦なく一気に差し込まれた男のコン棒は彼女の直腸を占拠し、強引に軋み開かれた菊門がジンジンと痺れる。

(い、痛いッ!イャ、お尻なんてッ!アァァ…)

 男が自分の体を揺すり上げると、腸壁越しに肉感が下半身に広がり、愛撫どころか触れもされていない女芯の方までがダラダラと濃い潤みを流す。男はオッオッと低く切ない声を洩らしながら、腰の上に抱えたマヤの下半身を前後に揺する。その度にズブッと埋め込んだものが腸壁の中で踊った。

(イヤァ、アッ、変に、変になっちゃうよォ!)

 辱められ痛めつけられているのに、彼女の肉は男の行為に淫らに反応する。その矛盾した状況の中で、男の暴力に屈服させられた惨めな気分がマヤの全身を覆っていた。

(こんなッ…こんなのッ…酷すぎるぅッ!)

 ホコリ臭い薄暗い部屋の中で、ズブ濡れの惨めな格好で、見知らぬ男によりにもよってバックバージンを奪われる。考え様によっては女芯を犯されるよりも異常な行為であった。

「オウッ!」

 男が短くうめくと、後ろを貫く太いものがヒクヒクとマヤの直腸の中で震え、熱い濃汁が腸管の中にブチまけられる。男が自身を引き抜く瞬間に一層強い痛みがマヤの菊門を襲い、その門の隙間からジュルジュルと腸液混じりの男の放ったものが滲み出て彼女の尻の底を汚した。最後は男の腰の上に正座を崩して跨り込むような格好になっていたマヤは、ドロンとした目を剥いたまま、正面の壁にもたれかかるようにして気を失った。

(私の体って、おかしいんだ、きっと…)

 頭の中が白くなり意識が飛ぶ直前、マヤは男の力に屈して恐怖と屈辱の中に快感すら覚えた自分の体は、どこか変なのだという結論で発狂寸前の自我をつなぎ止めた。

■■■

 突然の豪雨で雨宿りがてらに来店した客で店内はたちまち活況を取り戻していた。混み出したカウンターをさばくためにマヤを呼びに、ひとり裏手に回った店長は、仕事を言い付けてカウンターを離れた僅か15、6分足らずの間に痛々しい姿になって雑具倉庫の片隅に転がっているマヤを発見した。

「マヤちゃん!どうしたのッ?」

 口と両腕を封じていたガムテープを外されたマヤは、声も立てずに真っ赤になった瞳から涙を溢れ出させる。しかし恐怖と羞恥で壁に体を寄せたままに体を硬くしてガタガタと震える彼女は、抱き抱えようとする店長を脅えた表情で睨み付ける。その異様な光景に事情を察した彼は部屋の照明を付けてから倉庫のドアに鍵を掛け、店に居合わせた女性のフロアマネージャーをすぐに連れて戻って来た。

「大丈夫だから、ネ」
「私、私…」

 アルバイトを扱い慣れた彼女の腕に抱き抱えられたマヤは、ようやく緊張から解放され細い声で泣いた。そしてマヤの身に降り掛かった2度目の不運は、機転を利かせた現場の2人が内々に事を処理したために店の誰にも、友達の加賀ミキにも知られずに済んだ。だが、彼女の心と体の奥底に、この衝撃は深く刻み込まれたのである。1度目は模造ペニスで処女を奪われ、2度目はいきなりアナルファックを受けたマヤ。彼女はこの時誓った。卑しく女の体を貪ることしか考えていない男なんて絶対に好きになるものか、そして、そんな卑しい行為に二度と自分の体を狂わせてなるものか、と…。

■■■

マヤ・参〜剥がれたリボン/終



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