作 / Sa−toshi ・ 画 / 森里 涼


マヤ・想い出の夏休み 〜 秋茜の乙女たち


 頭上に広がる青みの強い秋色の空。その下を時折吹き抜ける湿気の少ない風に乗って聞こえる子供たちの歓声や水しぶきの音。ここは東京を離れることおよそ200キロ。背後には特徴ある険しい凹凸を持った八ヶ岳の黒々とした頂を望む、その街の中心からやや外れたところにある公営プールである。

「ねぇ、マヤぁ、せっかく来たんだから泳ごうよ!」

 色とりどりのビーチボールや浮き輪を持った近隣の小中学生や親子連れの姿が目立つ、コースロープの外された50メートルプール。そこから今、上がってきたばかりの、その場にはちょっと不似合いな鮮やかなオレンジ色のセパレートの水着を着けた快活そうなショートカットの少女。彼女は既に大人顔負けの引き締まった体のラインを誇示するかのように大きな手振りで、プールサイドの日除けの庇の下のベンチに腰掛けている友達の名を呼ぶ。

「…うん」

 名前を呼ばれたその少女は、しかし少しためらいを含んだ返事を愛想の微笑みと共に返すだけだ。高校2年に進級して間も無い、蒸し暑い初夏の朝に満員電車の中で純潔を汚され、その傷も癒えぬ夏休み前の1日だけの身代わりアルバイトで惨い凌辱を受けた少女・伊吹マヤ。今、彼女は親友の加賀ミキと一緒に夏休みも半ばに入った8月の1週間を、信州にあるミキの親類の家に遊びに来ていた。

「プール、すごく気持ちいいよ」
「うん…」

 庇の下に戻ってきたミキは、持ってきたカンバス地の大きな手提げから取り出したバスタオルをマヤから受け取ると頭からそれを被り、重そうに水を含んでいる耳がはっきりと見えるくらいに短くつめた色の抜け掛かった茶髪をガサガサと拭き始める。手を忙しく動かしながら、彼女は隣に座るマヤに声を掛けるものの、揃えた膝の前で手を組んで答える彼女の返事には心なし力がない。

「なぁんだかなぁ、貴重な夏休みはあと半月もないんだよ、マヤ」
「そうだね」
「アタシは気合入れておニューの水着で決めたのに…」
「ごめん…」
「マヤぁ、学校指定の水着っていうのはないんじゃないかい?」

 高校2年の夏休み。羽を伸ばせるのは今年限りとばかりにバイトも遊びも全開モードを示す、程よいトースト肌も似合うカジュアルなミキに比べて、夏休みに入ってもあまり出歩いていない生白い肌のマヤは、ビキニラインのカットも控えめな紺地の競泳用水着姿だった。おまけにその胸元には、学校指定を示す校章までしっかりと入っている。

「そりゃ、ここじゃあたしのカッコの方が浮いちゃってるのは認めるけどぉ…」

 務めて陽気に振る舞っているミキ。もっとも彼女が隣町の大きなレジャープールを選ばなかったのは、年頃の男の子たちの視線に神経質になるかもしれない傷心のマヤに対する気遣いだった。手を止めて俯き加減なマヤの顔をのぞき込むミキ。

「まだ、こわい?」

 真顔で尋ねる彼女の真剣そうな瞳に、マヤは友達の心意気を感じて声を詰まらせる。

「そうじゃない、けど…ごめんね、心配掛けて」
「そう思うんなら、ホラ立って、元気出して泳いだ!泳いだッ!」

 このまま泣きが入ってしまっては何の解決にもならないと思ったミキは、やおらマヤの左右の脇に手を差し込んで強引に彼女をベンチから立ち上がらせる。

「あ、ちょ、ちょっと!ミキってば」
「ほ〜ら、ガキンチョどもに負けるなぁ!」

 そのまま彼女の背をプールの縁まで押し出したミキは、脇で派手にしぶきを上げて飛び込みに興じている小学生の男の子たちに聞こえるような大声と共にマヤの体をドンと水面に突き落とした。

「キャアア!…」

 驚嘆とも悲鳴ともつかぬ声を上げて、キラキラと水面に陽光を反射しているプールの中に背中から落ちるマヤ。しぶきと泡の中から水を被った彼女は、浮上して両手で濡れた前髪を退けながら顔面に流れる水滴を払い、プールサイドに腰掛けて両足をバタバタさせて彼女に水を掛けようとしているミキに向き直る。

「もう!ミキったら…」
「ね、気持ちいいでしょ」

 悪意のないミキの笑顔に、マヤもつられて微笑んでいた。水着に着替えることもなく暗い夏休みを過ごしていたかもしれない自分を、こんな形でアシストしてくれる友達の存在。自分の体に嫌悪感すら抱いていたマヤは心と体が、この小さな街のプールで癒されたような気がした。

「フゥ、いい風…ありがとうミキ」
「マヤ…」

 プールサイドのステップを上がってきたマヤは水を滴らせている伸びやかな肢体を、しばしそよ風に晒して肩の力を抜く。傍らの親友に感謝の言葉を掛けながら水着のヒップラインの食い込みを両手の指先で直す彼女の、水を含んだ水着の胸元の生地越しに冷えて硬くなったその頂上の豆粒のような突起が、その時ミキにはハッキリと見てとれた。軽く瞳を閉じてそう言いながら体を風に当てている、マヤの恍惚にも似た表情の女っぽさともあいまって、ミキはドッキリしながら一瞬マヤの肢体に目を奪われる。

「え、何?」
「ううん、何でも…ない」

 自分を見つめるミキの視線に気付いたマヤが声を掛けると、ミキは紅潮してくる頬を彼女に悟られないように慌てて視線を逸らして下を向いた。マヤの濡れた体に貼り付いている何の飾り気も無い水着が一層その初々しい体のラインを際立たせ、ミキが気にしないようにと思えば思うほどにその姿が彼女の頭の中を巡る。

(アタシってば、何考えてんだろ…)

 ボーイフレンドとの恋愛ゴッコには馴れっ子のはずのミキは、この自分でも理解し難い突然心の中に沸き上がった甘酸っぱい感情への動揺を押さえるのに懸命で、その時からマヤとの立場が逆転したかのように口数が少なくなってしまった。

■■■

 その夜、近所の鎮守様の縁日に浴衣で出掛けたマヤとミキ。2人は帰宅後もしばらくそのままの格好で縁側から流れ込んでくる涼しい夜風と、それに乗って聞こえる虫の声に過ぎ行く夏に思いを馳せていた。

「泳ぐのが、あんなに楽しかったなんて久しぶりだった」
「よかったね…楽しい夏休みになって」

田畑の多く残る緩い丘陵地に建つ割と大きなその家に、普段はミキの叔母がひとりで暮している。しかしその夜は隣近所の会合ということで叔母は街中にある市民センターまで出掛けていた。居間の畳の上に横座りになって足を伸ばしているマヤと、その横で何となくかしこまって正座を崩した格好のミキ。2人は居間の灯りを消して夜空から差込む銀色の満月の光を楽しんでいる。

「私、ミキがいなかったらどうなってたかわからない」
「そ、そんな大袈裟な…元はと言えばバイト替ってもらったアタシが悪いんだし…」
「そんなことない」

 あの事件から3日ほど休んで学校に出て来たマヤは、気丈にも普段どおりの自分を装おうとした。しかしミキの目はごまかせない。目線を真っ直ぐに合わせたがらない、無理に会話をリードしようとする彼女の態度の異変をすぐに感じ取ったミキは最初、急遽ピンチヒッターを頼んだことでマヤが自分の用事を我慢して、それで腹を立てているのかと思ったのだった。

「無理に頼んでゴメン、私の事、怒ってるんでしょ?」
「ち、違うわよ…別に、そんなんじゃないから」

 何かその話題に触れることを避けたがっている、バイト先で失敗でもしたのだろうか。

「嫌なことでもあったの?」
「もぅ、心配しないでよォ、別に何でもないんだったら!」

 会話の間がぎごちない。翌日、ミキは思い切って放課後に学校の相談室を借りると、そこに校内放送でマヤを呼び出した。何かを隠している…ミキの直感は当った。

「アタシのせいでマヤが何か我慢してるんだったら、謝るから!」

 いきなり目の前で土下座をして声を震わせ始めた親友の態度に、マヤもついに堪えていたものが堰を切ったように溢れ出す。一生黙って自分ひとりで我慢しようと思っていた心の傷。彼女はガクリと膝を落とすと、ミキの両肩を抱きしめて泣いていた。

「もしも、マヤに恥ずかしいことをしたのがお店の誰かだったら、アタシはそいつを刺してたかもしれない…」
「ありがとう、ミキ」

 時折、遠くの通りから風に乗って聞こえる車の走行音以外には、夜風にそよぐ庭の草木の葉擦れの音と、不規則に強弱を繰り返す虫の声しか聞こえない。月明かりの下のそんな雰囲気が、1学期の終業式直前に起きた出来事を思い出させるマヤの言葉を余計にしんみりとさせた。しかし、それに答えるミキの方は昼間のことが頭から離れない。それどころかその場の雰囲気がマヤという少女の線の細さを際立たせてしまい、横座りになっている彼女の浴衣の裾からのぞく足首の白さが気になって仕方がなかった。

「蚊取り線香がもう終わっちゃうネ…」

 しんみりした雰囲気を変えたい、ミキは会話の糸口を切り替えようと2人の後に置いてあった陶製の灰白色のブタの線香入れに手を伸ばす。

「あ、私がやるから」

 ほとんど同時にマヤも振り返る。四つん這いのミキと横座りのまま体を後に伸ばしたマヤの視線が、今、燃え尽きて消えたばかりの線香入れを挟んでカチ合った。ミキの視線の下に、マヤの顎の下の首から浴衣の襟元にかけての白い肌があった。動悸が激しくなり、唾を飲み込むミキ。

(こんなにキレイなこのコの体を、野蛮な奴が汚したなんて…)

 それは中学から付き合っている親友に対して行われた凌辱に対する怒りというよりも、ずっと自分の前にありながらその妖しい輝きに気付かなかった宝石を先にさらわれた事に対する嫉妬のような激しい感情だったかもしれない。理屈をコネるよりも先に体が動く性格のミキが我に返った時、彼女はマヤの両肩に手を掛けて、畳の上に押し倒していた。

「ミキっ、どうしたの?!」
「…ゴメンね、マヤ、アタシ何か変なんだ」

 困惑した表情でミキの顔を見つめるマヤ。ミキは何とか正気に帰ろうと頭を左右に振ったが、差込む月明かりに怪訝そうなマヤの表情に刻まれた陰影と、そのか弱げな声に、ミキの嫉妬と好奇心は耐えられなかった。

「だって、マヤがあんまりにも…」
「ちょっと、ミキ…そんなことイケナイ…」

 後は言葉にならない。マヤを眼下に組み敷く格好になっていたミキは、そのままマヤの藍色に花柄のあしらわれた浴衣の襟元に顔を寄せて、白い首筋に唇を付ける。思いも寄らない親友の行動にマヤはどうしていいのかわからない。小さく体を左右によじりながら小さく拒絶の言葉を口にしてあいまいな抵抗を試みたが、それはミキの行動をより積極的にするだけだった。

「キレイな、アタシのマヤ」
「ミキッ、お願いだからやめてッ!」

 マヤが抵抗することで、彼女の浴衣の襟元は逆に緩んで肌蹴てしまう。そこから立ち上る風呂上がりの石鹸の残り香がミキの鼻孔をくすぐると、もう彼女の行為には全く歯止めが効かなくなった。

「マヤ、マヤッ…」

 憑かれたように彼女の名前を口にして吐息を荒げるミキは、それまでの抵抗で緩みかかっていた彼女の浴衣の帯を、更に緩めてしまうとその胸元を開こうとする。理性を逸したかのような親友の行動に、ようやく本気で抵抗しよう強く体をくねらせるマヤ。

「いやッ、ミキの…馬鹿!」
「アタシっ悔しい!こんなにキレイなアンタの体が汚されるなんて…」

 親友に対する愛おしさと、少女マヤの肉体に対する興味と、彼女を凌辱した輩への嫉妬が混濁し、突っ走り始めてしまったミキ。彼女は口の奥で嫌がるマヤに自分の行為を説明しようとするが、今の状況ではきちんと言葉になる筈もなく、マヤを組み敷いたまま動きを止めた彼女は感極まって涙声でしゃくり上げる。そして角度の変わった月の光が肌蹴た浴衣の胸元にマヤの右のふくらみと、張り詰めた頂上の紅色の乳蕾をぼんやりと照らし出した。

「マヤ…」

 ミキの瞳からこぼれ落ちた涙が肌蹴て半分顔をのぞかせたそのふくらみにパタパタと滴を作り、裾野にゆっくりと伝い流れる。呼吸の度に小さく肩を上下させてながらマヤを押さえ付けていた彼女の動きが止まった。何かをつぶやいたマヤの小声を耳にしながら薄暗い月明かりの中に浮かび上がる、その色付いたふくらみの頂上をしばらく見つめていた彼女は、やはり聞き取れない小さな言葉を口にするとやがてゆっくりと顔を近付けて、それを湿った唇の間に含んだ。

■■■

 涙声で訳のわからないことを口走るミキの行為は、マヤの体に一瞬の戦慄を走らせた。威勢が良いとはいえ、同じ女の子がしていることだから手荒な乱暴とまでは行かないが、非力な抵抗を封じられて自分の体に唇を這わせられた彼女の脳裏に2度の屈辱が蘇る。もみ合いの中で浴衣の帯が緩み、襟元が肌蹴て片方の胸がすっかりこぼれ出すとミキの動きが止まる。汚された体をこんな形で親友の眼前に晒す。マヤはイヤらしさへの反発よりも、そのことへの劣等感ゆえの恥ずかしさに身を固くして言った。

「ダメ…汚いから」

 汚い?自分の下でかすかな石鹸の香りを漂わせながら息づく、月の光に照らされた白い体が?ふくらみの先を目にしながらミキは思った。

(汚いのはマヤを辱めた連中よ!こんなにキレイなアンタの体を、アタシの大切なマヤの体を…)

「マヤは、アタシのもの…」

 濡れたミキの睫が月光に光った。どこか艶めかしさも漂わせた思いつめたような表情で自分の体を見つめながら、そんな言葉をつぶやいた彼女の唇が右の胸の先に近付くと生暖かい吐息がそこに掛かる。それがマヤの体の奥に眠っていたおんなの感覚をゆっくりと呼び覚まし始めると、抵抗とは裏腹に丸い紅色の滲みの中心に小さく突き出している乳蕾が、硬くはっきりとシコリ立つのがマヤ自身にもわかった。

(いけない、変な気持ちになっちゃう)

 2回だけとはいえ、正常な行為で男を知らないままに強烈な肉感を刻み込まれたマヤの体は、とても感じ易くなっている。性に対する嫌悪感を抱く彼女でも、何かの拍子にどうしようもない体の渇きに負けてひとり戯びをしてしまうことが時々あった。火を点けられたら止められなくなってしまうという恐れと、快感に身を委ねたいというおんなの本能に、更なる抵抗を躊躇するマヤ。そしてミキの唇が尖った右の乳首を挟み、彼女の舌先がそこに唾液を絡ませると、抵抗と緊張を突き抜けるような甘い刺激が頭と下腹部に伝わった。

「あん、イヤ…」

 んっんっ、と幼子が鼻を鳴らすような声を立てながら含んだ固く紅い乳蕾に舌を遠慮がちに絡めるミキの行為には、今までマヤが受けた一方的な攻撃的愛撫とは違う優しさがある。両手を彼女の上腕に掛けて思い切って振り払おうとしたマヤは、右の胸の先端が感じる甘美な感覚と、緩やかだが細やかに的を突いてくるミキの愛撫にそうする事が出来ない。

「お願いだから、やめて」

 そう小さく言いながら体をよじって逃げるのが精一杯のマヤ。唇を彼女の胸から離したミキは、マヤの顔をジッと見る。困惑と羞恥に戸惑い、眉間に皺を寄せているマヤの表情の奥にあるもの。ほんの少しの愛撫で頬を茜色に紅潮させ、肌を熱くしている彼女の中に芽吹いているおんなの感覚をミキは見抜いていた。

「好きよ、マヤ」
「私もミキが好きだわ…、でも、こういうのは違うと思う」
「違うかもしれない…けど、今の自分の気持ちにアタシはウソつけない」

 ミキは常識に逃げようとするマヤの言葉に動じることもなく、きっぱり言い切ると潤んだ瞳で彼女を見つめ、そしてその唇に自分の唇を押し当てて抱きしめる。

「んむ…!」

 こんな形でファーストキスを奪われることなど予想もしていなかったマヤは、その瞬間驚きと強烈な恥ずかしさに全身を硬直させた。混乱に何も出来ないマヤの唇をミキは強弱を付けて自分の唇で吸いながら、その間を舌でゆっくりとなぞる。マヤの肩を抱きしめていた彼女の右手が浴衣の前衣を割り、その下の硬く張った左のふくらみにピタリと貼り付く。少し汗ばんだ掌の真ん中の、もうひとつの乳蕾の硬い尖りの感触。ミキは右手の掌を浮かせると壊れやすい陶器でも愛でるかのように、円を描くように静かにそこを撫でそよがせた。

「ぁはあァァ…」

 堪らずにマヤは唇を離して鼻に掛かるような声を洩らす。体を硬直させている間に奥手な彼女とは比較にならない経験を持つミキの流れるような愛撫に、マヤの抵抗心はどこかに掻き消えてしまった。頬を摺り寄せ、耳たぶを甘く噛み、顎から胸元へとゆっくりと舌を這わせつつ指の腹で乳首の尖りを転がす。ひとり戯びでは味わえない並行してポイントを攻められる行為にマヤは酔い、ゾクゾクと脊椎に波動が走る度に背筋を弓なりにしならせ、歓びに喘ぎながら顔を左右に振った。

「んあ、あぁン」
「…気持ちいい?感じてるの?」
「やあぁ、こんな…、恥ずかしいィッ」

 再びマヤの胸元にミキは顔を降ろし、緩み切った浴衣の襟元を左右に開いた。胸板の上に愛らしく盛り上がった両のふくらみは、差込んだ月明かりの下で上気して全体が薄いピンク色に染まっている。ひと呼吸ついたミキは左、そして右の尖った頂上に交互にキスをする。マヤが身悶えしながら両ももを擦り合わせると、最初の胸への愛撫で湿り始めていた彼女の恥丘の下の女芯の縁にジットリと潤みが滲み出す。自身それを知ったマヤは思わず声を上ずらせてしまう。

「うぅッ、変になってきちゃうゥ…」
「もっと気持ちよくしてあげる」

 同性の微妙な変化をミキは直感していた。既に太ももの辺りまで擦り上がっているマヤの浴衣の裾をかき開いた彼女は、柔らかな月光を反射している青白いパンティの布地の上から下腹部のなだらかな盛り上がりに顔を埋める。

「いい、匂い…」
「だめぇッ、恥ずかしい」

 大きくミキが息を吸い込むと、体臭とは違うおんなの香しい匂いがクラクラと彼女を酔わせる。押し当てた鼻先が布地越しに微妙な狭間に食い込むと、そこが既にジットリ濡れているのがはっきりとわかった。ミキは顔を上げると、手先で力無くそこを押さえるマヤの抵抗を無視してパンティの腰に両手を掛け、手慣れたように尻の丸みに沿ってスルリと膝下までそれを引き降ろしてしまう。さほど濃くはないヘアの辺りを覆うマヤの掌の下から更に濃い匂いが立ち昇ると、ミキは閉じたマヤの両ももに再び顔を埋めて柔らかな内股にキスをする。

「やんッ!」

 マヤがそれを止めようと下腹部を覆っていた手をどけた隙を突いて、ミキの唇が暗く影を付けた恥丘の丸みの下にある女芯の扉をついばむと、マヤはたまらず上体を起こして膝を立て、それを制止しようとした。が、バランスを保とうと股が開いた途端に、ミキの舌が扉の端に小さく頭を剥き出した若芽を弾くとマヤの体中の神経が打ち震える。

「はぁうッ!」
「ん、む…可愛い」
「ひあぁぁッ」

 扉の縁に滲んでいる潤みが匂いと濃さを増して狭間の底からあふれ出す。それをミキの唇がチュッと音を立てながら吸い取ると、マヤの喘ぎは半泣きになった。

「んあぁぁ、もおォ…」
「マヤッ…大好き」

 自らの体の中の血流がゴウゴウと音を立て全身が発熱し、下腹部に染み出したもので下着がベットリと恥丘に貼り付くのを感じたミキは、自分の浴衣の裾を割ってそこをマヤの太ももに押し当てながら横抱きにマヤを抱きしめる。そして、右腕を伸ばして彼女の尻の割れ目の底に指先を這わせて後の菊門の周りを軽くくすぐってから、ヌルんだ会陰の先の女芯のくぼみに押し当てる。

「マヤッ!」
「あ、あうッ!そこはッ…」

 指先がくぼみにゆっくりと沈み、中の粘膜をクルクルと掻き回す。マヤはブルブルと体を震わせながらミキの体にしがみ付いた。

「あ、イ…い!」
「あはァッ!マヤッ!」

 ミキは股間にドッと熱いものが噴き出すのを感じて全身が硬直する。高まりを迎えた2人の回りでその瞬間、時間が止まった。しっかり抱き合った2人の体から力が抜けて、ハアハアという荒い息遣いがいくらか納まった頃、虫の声に混ざって何かの小さな羽音が聞こえた。

「トンボ?」

 昼間にどこからか紛れ込んだのだろうか、1匹の秋茜が縁側と居間を隔てる障子に止まっていた。ミキはマヤから離れると乱れた自分の浴衣の前衣を直しながら、膝立ちに障子に歩み寄ってその秋茜を指先に捕らえる。山から平地に折り始めた秋茜は成熟すると飴のような茜色になるが、月の光にかざしたそのトンボはまだ若いのか、オレンジ色の細い尾を盛んに屈伸させていた。

「ごめんね、でもあたし、後悔してないから」
「ミキ」
「マヤ、とってもキレイだった…汚くなんてないよ」
「…うん」

 まだ果てた後の気だるさを感じながら浴衣の乱れを直して、ミキの脇に寄り添うマヤ。ミキが指先の力を緩めると若い秋茜は夜風の中に舞い、庭の何処かへと飛んで行った。2人一緒に目で追うその軌跡の先、庭木のシルエットの彼方の空にチカチカと遠雷の稲光が終わる夏を惜しむように光っている。互いの一番きれいな時間を共有したマヤとミキは、初秋の夜に去り行く夏の想い出を確かめるかのようにもう1度、長いキスを交わした。

■■■

「続・想い出の夏休み」に続く



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