作 / Sa−toshi ・ 画 / 森里 涼


マヤ・六 〜 檻の中、再び


 車窓の外を流れる宅地化の進んだ丘陵。カラータイルを貼り付けたモザイク画のような雑多な色彩の屋根と壁、そして大きさもデザインも違う戸建て住宅や工場生産されたユニットを積み上げたと一目でわかる無機質な小規模アパートに混ざって威圧するかのように視野の一隅を占拠する大規模マンションの間にチラホラと残る木々。まばらに浮かんだ綿雲の間から差す、暦本来の秋とは名ばかりの強い陽光に照らされて映えるその緑が、彼女の疲れた目を癒す。

(あ〜ぁ、やっと終わったかぁ・・・)

 中央線甲府発新三鷹車庫行きの上り快速。まだ陽の高い昼下がり。夏休みを終えて新学期を迎えた高校2年生の伊吹マヤ。その新学期も早1ヶ月半が過ぎ、受験準備のための最初の本格的な評価テスト期間を終えた彼女は軽い疲労の中でテストの成果に幾ばくかの満足感を味わいながら、その時間帯にしてはほぼ満員で混んだ車内の中ほどで吊革に片手を掛けて流れる車窓の光景をぼんやりと眺めていた。

(元気にやってるかな、ミキは・・・バイトに夢中になってなきゃいいけど)

 波乱に満ちた17歳の夏休みを一緒に過ごした親友の加賀ミキとは、新学期に入ってからゆっくりと会う時間がない。夏休み明けにクラス分けされたマヤを含む上位受験校への進学希望者は別校舎の教室に移され、授業時間もカリキュラムも異なる進行で1日のスケジュールが進む。そのためミキとは数日に1度、校内のどこかで挨拶を交わすだけになっていた。

(電話する暇がないなら、手紙でもくれればいいのに)

 さすがに校内で場所も時間もわきまえずに通話するような生徒こそいないものの、私学の一貫校の割りには比較的生活規則の緩やかな彼女の学校では携帯電話や電話機能付きPDAを持つ娘は多い。しかしマヤ自身はその堅い性格が故に収入のない身分でそういったものを持ち歩くことに抵抗があって、今まではあまり関心がなかった。しかしただ1度とはいえ肌を通わせた間柄になった親友と頻繁に会うことが出来なくなる新学期を前にして不安と寂しさを覚えた彼女は、月に何度かある放課後の強化講習で帰宅が遅くなるコトを理由に、通話明細を取ることを条件にして両親に携帯電話をねだった。そうまでして親友との唯一確実な連絡手段としてだけのために持った携帯電話。だが、授業時間が食い違う上に新学期からファミレスの給仕係としてバイトに精を出しているミキから電話があったのは、たった1度だけしかない。

<< もしもしマヤぁ〜? 携帯買ってもらったんだって? 今度ゆっくり電話するね、今バイトの最中で時間あんまりないんだ、ゴメンね・・・>>

 初めての電話は直接掛かってきたのではなく、携帯電話の留守録サービスに残された短いコメントだった。それを聞いた時、マヤは無性に悲しい気持ちになったものだ。

(夜中でもいいから、直接声が聞きたいのに)

 夏休みのことがあってから、ひょっとするとミキは自分を避けているのてはないか。月夜の晩に好奇心と自制心とが揺れ動く戸惑いの中でミキから求められた最初の行為とは違い、浜辺で男に汚された後にマヤ自身がミキを求めた時のそれは、自分でも予期せぬほど一方的な激しい衝動に駆られたものだった。それが彼女からミキを遠ざける原因になってしまったのではないか?

(あの時は、いつもの私じゃなかった・・・)

 自分でも説明のつかない、別の自分が目覚めたような本能的な欲求のほとばしり。それはとても自制出来るような類のものではなかった。それが親友との仲にスレ違いを生んでしまったかもしれないという苦い後悔の念。しかしそのことを思い出すときに同時に沸き上がってくるのは、全身が進んで歓喜の声をあげたような初めて味わった激しい生身の感覚である。

「・・・私ったら、何考えてんだろ、マヤの馬鹿もんッ」

 体の奥に淡いくすぶりを覚えたマヤ。発着時刻とマナー啓発、それに時間ハズレの車内の混雑の原因と思われる途中駅の構内に同居するショッピングセンターのセールの案内を流す合成音声の女性車内アナウンスの声に、彼女はハッとして小声で自分をたしなめた。だが・・・。

■■■

 次に停車する東多摩駅 〜もとは立川と呼ばれていた〜 までしばし間が開くために、八王子駅を出た快速電車は定速域まで一気にスピードをあげると上り勾配以外ではモーターを止めて惰性で走る。タタタタッという単調な線路からの軽いノイズと、左右に車体が揺れるときに生じるわずかな軋み音、そして下り勾配での電磁ブレーキ独特の低いうなり以外にはマヤの耳には入らない。朝夕のラッシュにつきもののサラリーマンやOLの持つ携帯の呼び出し音や登下校の女子学生の嬌声が聞こえないのは、まだ午後2時前という半端な時間帯なのだから当たり前なのだが、昼下がりの買い物客が多いならば、主婦たちの談笑や子供の声が聞こえてきても良さそうなものである。

(なんかオジサンばっかり・・・変なの)

 車両の中ほどの長椅子の前で吊革に捉まっているマヤは車窓に顔を向けたまま、左右に視線を巡らせてみる。確かにビジネススーツ姿やラフなカッターシャツ姿、あるいはTシャツを着た4〜50代の男性の乗客がやたらに多い。彼女の前の長椅子に座っているのも、皆そういたった男性ばかりであった。彼らは皆一様に目を閉じたり新聞を広げたりしている。彼女の左に立つ淡いグレーのサマージャケットを着込んだ白髪混じりの初老の男も横半分に畳んだスポーツ紙を読み、右に立つ小太りのネクタイ姿の若い男は適度に冷房が効いた車内だというのに、時折手に丸めたハンカチで顔を拭っている。

(んッ・・・)

 その男の上着から漂う体臭にわずかに彼女が顔をしかめた時、電車は丘陵の谷間を縫う屈曲の多い区間に差し掛かりスピードに乗った車両は左右に大きく揺れた。その揺れに合わせるようにマヤの周りに立つ乗客が彼女の身体に左右と背後から密着すると、押されてバランスを崩しかけマヤは脇を開き、吊革を握り直した。

(ちょっと・・・・・・!!?)

 数日来の陽気でベストを着けず白い半袖のシャツブラウスにグレーのスカートという盛夏の服装をした彼女は、その薄いシャツ越しに背中の上をツーっと這う指の感覚にゾクッと鳥肌を立てた。その指は左右の肩甲骨の真ん中あたりで止まると、そのすぐ下にあるブラのホックをシャツの生地と一緒に引っ張るように動き出す。

「やめてください」

 小声で抗議しながら後ろを振り向こうとしたマヤだが、背後に立つ乗客の誰かが広げている新聞のせいで、背後で動く不届き者の姿を確認することが出来ない。それどころか密着した乗客の身体の間から伸びた別の手が、彼女のスカートの上から尻の丸みを円を描きながらゆっくりと、そして力を入れて捏ねるように撫で回し始める。

(あ!)

 痴漢!? マヤは再び車内で遭遇した屈辱を確信した。彼女はその場から逃れようと身体をひねって場所の移動を試みる。しかし周りを取り囲むように立つ乗客の男たちは頑として動こうとはしない。

「すいません・・・あの」

 左の男に場所を開けてくれるように小声を掛けたマヤだったが、男は新聞から少し顔を逸らし横目で彼女を冷たく一瞥しただけで、また新聞に視線を戻してしまった。右の体臭を漂わせている汗かきの男は、声を掛ける以前に左肩でマヤの身体をブロックする形で彼女を拒絶しているという感じだ。その間にも尻を撫でる一方の無礼な手は尻の狭間をスカートの上から撫で降ろし、スカートの裾をゆっくりと捲りあげていく。腰の後ろにスカートの生地を引き上げられる気配を察したマヤは、赤面に火照らせながらその顔を引き攣らせた。脳裏に蘇る最初の屈辱の行為、その再来に脅え身体をもがこうとする。しかしその努力もせいぜい小さく左右に尻を振る程度の動作にしか表わすことしか、今の彼女には出来ないのだ。

(クックッ・・・)

 マヤの耳に誰かが漏らした含み笑いが届いたような気がした。捲られたスカートの後ろから大きな手が、その朝おろしたばかりの新しいショーツにまとわりつく。ブラと揃いで買ったオフホワイトの少しカットのキツい大人っぽい小振りなデザインは、実のところミキとのことを意識して買ったとも言えなくない。もしもミキとまた肌を合わせるようなことがあった時、おんなを意識して見て欲しいという気持ちがマヤには芽生えていた。

(やめてくださいッ・・・イヤ!)

 小さな飾りの付いたショーツの股ぐりをグッと引っ張ると揃えたゴツい指が直接、彼女の尻肉の上に触れた途端、声にならない抗議を口にしたマヤの両目に涙が溢れ出した。

(また・・・またあたし、汚されちゃうの!?)

 丘陵を縫う掘割区間から高架区間に入った快速電車はほとんど揺れることもなく単調な走行音を車内に響かせて走る。非情な男たちの中で小刻みに身体を揺すりながら、むなしい抵抗を続けるマヤ。シャツの上からブラのホックを執拗にまさぐる手が止まる。胸郭を締め付けていた感覚がフッと抜けた。みずみずしく張った胸元のふくらみをガードするものが背中のホックを外されて緩んだのだ。それがわかった時、彼女の両目からこぼれた涙が頬を伝い落ちた。

■■■

 男の膝が強引に、マヤの膝の後ろから両の太股の間に割り込んで彼女の股をコジ開ける。ショーツの股ぐりの脇から潜り込んで尻の柔らかい丸みをしばらく楽しんでいた揃えたゴツい指は、わずかに彼女の股に掛かった力が緩んだ隙を逃さない。中指の先で仙骨のあたりから片方の尻肉を押しのけるようにして、尻の狭間をゆっくり撫で降ろしていく。尻の底まであと少しという所で再び仙骨まで撫で上げるその行為は、まるで処刑前の囚人にいたずらに恐怖を味あわせているかのようだ。マヤは時々天井を向いてすすり上げながら、片手で吊革を握り直す。凍るような戦慄とは裏腹にその手は汗ばみ、腋や胸元、そして今、無粋な手によって辱められている下腹部の狭間もシットリと汗で蒸れ湿る。

「イヤですッ!」

 背後から狭間に降ろされた指先が狭間の後ろの暗いすぼまり、汗で湿った菊門に触れた。その途端、マヤは堪りかねてハッキリとあたりに聞こえるように拒絶の言葉を吐いた。ガサつく太い指先が止まり、彼女の左右の乗客の男が同時に彼女の方を向く。マヤの前で長椅子に座って経済紙を読んでいたインテリっぽい堅そうなスーツ姿の中年の男が、顔の前から新聞を降ろして彼女の方を見た。涙目のマヤとその男の視線がカチ合う。男は口元に優しそうな微笑みを湛えたが、黒く細いフレームのメガネの先にある目は笑っていない。目線で哀願するマヤを突き放すように、男は手元で半折りにした新聞に再び視線を戻してしまった。そしてその男の腰、薄緑色のズボンの股間がはっきりと突き立っていることにマヤは気付いた。

(あたしがされているコトをこの人知ってる! 周りの人たち・・・みんなグルなんだ!!)

 目を見開いたまま、マヤは戦慄に硬直した。周りの男たちは自分が何をされているのか知っている。清潔な白いシャツブラウスの下でブラを剥ぎ取られかかっているコトも、背後からめくり上げられた品のあるグレーのプリーツスカートの中で男の汚れた手指がショーツの脇から潜り込み、狭い谷間の底にあるスミレ色に香る場所をもてあそぼうとしていることも。

(酷いッ! ・・・恥ずかしぃッ!!)

 衆人環視の中で身体をまさぐられ汚される、そう思った途端に顔の火照りが移り火したように、それまで凍り付いていた全身が熱くなるマヤ。高まる鼓動がバクバクと頭の中で反響し、耳の奥でザッザッという血潮の巡るような耳鳴りがする。そしてジットリ汗を吹き出し始めた下腹部の底、草むす恥丘から連なる肉の付いた閉じられた外門の中の薄柔い内襞のあたりがムズムズと疼き始めたことに、彼女は心中で自分自身に向かって呪いの言葉を吐かずにはいられなかった。

(マヤの馬鹿ッ! 裏切り者ッ! こんなに恥ずかしいコトされてるのに、またアンタはッ!)

 実際、初めて車内で辱められた時から自分の身体がおんなとして敏感になったコトをマヤは自覚していた。そしてファーストフード店の物置部屋で肛虐された時から、汚らわしい欲求を否定したい自分の意志とは正反対の、体の芯から沸き立つような衝動に混乱し、自制ではどうにもならずに手慰みに耽けるコトを覚えてしまっていた。潔癖でプライドの高い彼女としてそれは間違った行為だと、自我が否定しようとしていたにも関わらず1度火が付くとその衝動を押さえることが出来ず、ミキとの信頼関係で結ばれた行為は違うのだという矛盾をはらみつつも、刺激的な夏休みが明けてからはその自我に反する「ひとり戯(あそ)び」の頻度は増す一方だったのだ。

「はぁウッ!?」

 思わずマヤの驚きと恥じらいの混じった愛らしい声が漏れた。熱く蒸す彼女の尻の底に這う男の手指の先、菊のすぼまりにかかった太い指の頭がクルクルとゆるやかに小さく円を描くように門を揉み込み、そのままそれはキツく閉まった門の中にネジ込まれていく。ヌゥッと肛門の内側の粘膜を侵す太い指の違和感。埋まった指先が異物をヒリ出そうとする菊門の肉圧を嘲笑うかのようにグリグリと中を掻き回す。マヤは左手で吊革を強く握り、やや爪先立ちで不自然に捩った身体を小さく震わせる。それでも自分の中で暴れだそうとするおんなの感覚と、狼藉を働く野卑な連中に負けまいと抵抗する彼女の自尊心が両の大腿に力を入れ、腰を揺すり、その行為から逃れようとする。それを見透かすように2度3度と繰り返して尻の底に強いリズムで突き立てられた指が直腸を侵すと、マヤは大きく首を左右に振って鳴咽を漏らす。少し伸びたショートカットの黒髪が揺れ、吊革を掴むために伸ばされた左腕に当たると鳴咽に混じってサラサラと乾いた音を立てた。

「うッ! おぅぅぅ・・・」

 周囲が承知の上で行われている行為である。最初の時とは比べ物にならないほど、狼藉者たちの行為は無遠慮で激しい。吊革を握る彼女の左手の腋の下から手が伸びる。隣に立ってスポーツ紙を読んでいた白髪混じりの初老の男だ。彼はマヤが苦悶で身体を捩(ひね)らせたタイミングを見逃さなかった。自分の身体の前で両腕をいっぱいに交差させて右手で畳んだ新聞を読みながら伸ばした左手をマヤの胸元に這わせると、左のふくらみを白く輝くシャツブラウスの生地の上からゆっくり撫で回す。ホックが外されて中途半端に肩紐で吊り下がったシャツブラウスの下のブラのせいで、ややイビツな胸のラインが男の掌の下に浮き上がる。

「アッ、やめッ・・・やめてくださいッ!」

 菊門を貫いていた指が、汚物の混じった腸壁の粘液をまみれさせて体の中から抜き取られるのがマヤにはわかった。すぼまりの周囲がその汚れた粘液でかすかにヌメっている。抜かれた指はおろし立てのショーツの中で、その汚れをこそぐように布地をシゴいた。泣きながら強く抗議する彼女の声に呼応するように、男たちの低い含み笑いがあちこちから漏れる。

「お願いですぅ・・・あぁ! イヤァァァ」

 すっかり取り乱しているマヤにはその時何をされたのかわからなかったが、一旦彼女の身体から離れた男の手がすぐにショーツの中に舞い戻ってくると、その手はそのまま尻の狭間の底まで一気に這い進んだ。そして小さなカプセル様の異物を侵入したばかりで興奮の余韻の残る彼女の菊門の奥へとググッと埋め込む。その力のこもった指先を直腸の筋肉が締め付け、そこから逆に押し返す抵抗感がマヤの尻から下腹部の下の恥ずかしい疼きを増長させる。指は立ち去り際にそこに何か栓のようなもの(おそらくは脱脂綿の固まり〜タンポンのようなもの)をネジ込んだ。

「あふゥゥッ・・・」

 迂闊だった。連中はエモノが檻の中に入るのを待ち構えていたのだ。乗車する時にもっと周囲に気をつけていれば、こんなコトには・・・思ってみたところで何人いるのかわからない無頼の輩(やから)の手に掛かってしまってはどうすることも出来ない。孤立無援の車内でマヤは哀願し、泣く。そして過去3度の屈辱を覚えさせられた彼女の身体は、やはりココでも彼女の意志に反して埋(うず)み火のようにくすぶる肉の喜びを自ら呼び覚まそうとしていた。彼女は苦痛とも快楽ともつかぬ尾を引く喘ぎを吐き漏らす。

■■■

 行為に及ばれる直前、ミキとの夏の交歓にわずかでも想いを馳せていたのが間違いだった。シャツブラウスの左胸の上から這わせられた男の掌が、その生地越しに外れかけているブラのカップを上にずらすように動いた時、カップの縁のゴワゴワとした強い布地が左胸の頂上の小さな尖りを強く擦った。

「ンぁぁッ!!」

 尻の底への襲撃で自分の身体が一層敏感になっていることを、彼女はその心地良い刺激で思い知った。身体を突っ張り、思わず鼻に抜けるような甘い声を立ててしまったマヤ。その白い夏服の下に息づくふくらみの先端は、くすぶる欲情の炎を再点火させるスイッチになった。

(ダメッ! マヤっ、アタシはそんなハシたない娘じゃない!)

 必死で理性を保とうとする彼女は全身を鋼(はがね)のように突っ張らせ、ギリリッと歯を食い縛って声を堪える。この場から逃れることが出来ないならば、せめて身体を蹂躪しようとする無頼な輩たちの行為に耐えようと覚悟した。全身から汗が吹き出し、額からはその汗が伝い落ち始める。そんなマヤの歪んだ表情を見透かすように、ブラのカップを押し退けてしまった男の指が、ゆっくりといとおしむようにシャツブラウスの上から左のふくらみの上を這い回った。5本の指の腹が布地越しに固く尖りだしたふくらみの先端を擦り上げる度にイライラするような刺激が脳髄に伝わり、彼女は何度も首を振り乱した。

(もう、もうイヤッ! お願いだからそれ以上しないでッ!)

 心の中ではそう絶叫するマヤが刺激を堪えて閉じた瞼を一瞬開いた時、涙と汗に霞んだ視野の向こうに多摩川の河原が見えた。この先鉄橋で渡ってしまうと下車駅の東多摩駅は近い。もう少しの辛抱だ、そんな彼女の顔を、前に座る嫌らしい男の目が新聞の上端からメガネ越しに見つめている。

(悔しいッ!)

 それに気付いたマヤが敵愾(てきがい)心に険しい表情をしたのも束の間、背後でショーツの中に潜ってさんざん尻の底を汚し続けていた男の手がウエストのあたりから前に回り、彼女の腰を後ろに抱え寄せるように動いた。左手で吊革に捉まり棒立ち状態のマヤの身体が一層不自然な姿勢になる。グレーのプリーツスカートは横手から捲り上げられる格好になって彼女の左足の大腿部が露わになった。背後から密着している男から伸びているショーツの中の手は、動きを助けるためなのかあるいは正面に座る仲間の目を楽しませようというのか、ショーツの縁を左腿の付け根半分ほどまでズリ下げる。

「ダメぇッ!」

 マヤはそれまで右手に下げていた通学鞄を足元に落とすと、慌ててその手でショーツを下げたその手を押さえようする。しかし、右に立っていた小太りの若い男の左腕がマヤの右腕を素早く抱えるように封じ込んでしまった。同時に別の腕が背後から吊革を掴むマヤの左手に重なり、彼女は両腕の自由を失った。目の前に座る男からマヤの方を見れば、中途半端にショーツで覆われた下腹部の向かって右半分がその眼前にハッキリと眺められる筈だ。

「あァァ・・・」

 細い泣き声を上げるマヤ。すれ違う下り電車の通過音がそれをカキ消して行く。左の男の指が布地の上からはっきりわかるほど尖り立った左のふくらみの先を摘んでシゴき上げる。右の男はハアハアと荒い息遣いを耳元で立てながら、掴んだ彼女の右手の拳を握り込んで撫でている。別の腕が右の腋の下から伸びて、シャツブラウスを引き千切らんばかりに引っ張り、前ボタンを1つ2つと外して、その中に潜り込んだ。そして横手から半分引き降ろされかけたショーツのなかに伸びたゴツい男の手は彼女の下腹部、恥丘の茂みの上に置かれている。男の掌はそのまだ濃くはない茂みをワシ掴むとグイッと引っ張った。

「ひィッ!?」

 恥毛をムシられた痛みに、マヤは首を仰け反らせて天井を仰ぎ短い悲鳴を上げた。間髪を入れずにその手が恥丘から柔らかな肉の付いた彼女の外門に這い込み、その狭間に菊門をいたぶった指先がめり込む。そこは汗と、意に反して潤み始めたもので既に十分に湿っている。

「ハァァァ・・・あゥッ!? あァッ!!」

 その指先が門の内側の薄い襞を摘み出し、窪みの中に溜っていた潤みをクジり出すように動くと、マヤは垂れた頭を小刻みに振って小さな、しかし甘くはっきりした歓感の声を漏らした。襞の先端の感じやすいポイントを指の腹で弾かれると、その声が尾を引いた。

「はァァ!!・・・おぅぅぅ」

 多摩川の鉄橋に差し掛かった車内に、騒々しい走行音が響く。その音に混ざり合いながらマヤの口から吐き出される、おんなの芯を侵される悲嘆と肉歓の声が、周囲の男たちを喜ばせた。十分に潤みの絡んだ指が、鉤のように曲げられて彼女の芯にゆっくりと埋められる。1本そして2本・・・。

「んあ゛あ゛ッ!!」

 その指が中の肉壁を押し開くように動く度に、体の中から湧き出す快感が爪先から汚された尻の底、なぶられている胸のふくらみを経て、マヤの脳裏でスパークした。もう彼女ははばかることもなく、歓びの声を上げている。本能から隔離されてしまった彼女の自我は、涙を流し続けることでかろうじて抵抗の意志を示しているに過ぎない。そしてひとしきり激しい歓喜の波が押し寄せ、マヤは全身をブルブルと震わせながら立ったまま達した。

(・・・あぁ、イッちゃった・・・)

 マヤは呆然としながら昇り詰めたという実感を悔しさと恥ずかしさ、そして自我と反目する本能の満足感の混濁した思いの中で、それまでの行為の中で一番はっきりと感じていた。自分の体が嫌がおうにもおんなとして鍛えられていく。最悪の状況を味わえば味わうほどに、おんなの感覚が研ぎ澄まされていく。

「うぅ・・どうして・・・なんでアタシの身体は・・・」

 左の太股の付け根あたりを半端に捲り降ろされて下腹部を覆うショーツの股布は、汗と芯から溢れたもので重く湿っている。その下腹部に感じるその感触に自分の身体の呪わしさを重ねながら喘ぐ彼女の、汗と涙でクシャクャになった彼女の頬を再び吹き出た涙が伝った。

■■■

 多摩川を渡って電車は減速を始めていた。停車駅でありマヤの下車駅でもある東多摩駅が近いことを告げる車内アナウンスが流れる。シャツブラウスの前ボタンは外れ、抵抗のためその裾はスカートから飛び出し、誇らしげな紅いリボンタイは斜めに歪み、プリーツのスカートにはシワの寄ったボロボロの様態のマヤは通学鞄を放していた右手でその着乱れた服装を簡単に直した。

「大丈夫かね? お尻」

 その時、彼女の前に座る男がマヤに小声を掛けた。彼女は無視して足元に落とした通学鞄を拾い上げながら、吊革を握り直す。彼女の左右をがっちりと固めていたはずの男はいつしか場所を移したのか消えてしまっていたが、正面に座るイヤらしそうな男は相変わらずの表情でマヤのことを新聞越しに見ている。それをキッと睨み付けるマヤ。だが、その男の声を聞いた途端に思い出したように尻の奥に感じた違和感。

(何なの?・・・何を入れたの!?)

 空いている右手の甲で顔を拭いながら、尻の奥に差し込まれた物のかすかな違和感を気して怪訝な表情を浮かべるマヤ。たしかに奥の方の小さな異物感とすぼまりにキッチリ栓をされたような妙な感覚が彼女を不安に陥れる。それはやがて焦げるような緊張感を伴なう感覚になって彼女を襲い始めた。

「ヤダッ、お腹がヘン・・・何これ!?」

 電車は停止寸前まで減速した。しかし駅のホームはまだ遠い。時間調整なのか停止信号で止まるという趣旨の車掌のアナウンスが車内に流れる。

(いや・・・おトイレ行きたくなっちゃう)

 焦げるような感覚が焼けるような激しさに変わるのに時間はかからなかった。おそらくは便意を促すような薬剤を入れられたのだろう。直腸がキリキリと軋み始めるのと同時に、下腹部がゴロゴロという音を立て出す。一度引いていた汗が再び彼女の全身から吹き、波のように繰り返し襲ってくる排泄感を堪える度に両足を突っ張るマヤ。吊革を握る左手と鞄を下げた右手の握り拳が冷や汗で湿った。

「フッフッフッ・・・」

 前に座っている男だろう、含み笑いを漏らすのが目を閉じて顔を歪ませながら我慢するマヤの耳に届く。ひとこと言い返してやりたかったが、しかし声を立てられる余裕は彼女にはない。おまけに直腸を襲う刺激が、直前の行為で熱を帯びたままのおんなの芯に違う興奮となって伝播する。

(ああッ変! イヤぁ、漏れちゃうよォ・・・電車、どうして動いてくれないのッ!?)

 直腸を揺さぶるような波状の激しい刺激の感覚が、襲ってくる度に短く強くなる気がする。グルグルという下腹部から発する悲鳴のような音が周囲にも聞こえているかもしれない。しかも潤みが滲み出した上にカキ回されて開いたままの女陰の肉扉が新たな歓びの感覚で彼女を戸惑わせる。今の自分の身体の異常を周囲に知られているのではないかという恥ずかしさを、もう今のマヤは自覚出来る状態ではなかった。

「うぅぅぅッ・・・ひぃぃ!!」

 いよいよ口元から低く、時に高く、マヤは苦悶と歓喜の交じった声を発し出す。腸管の中で膨張し続ける内圧に懸命に耐える菊門。引き締める力で尻肉が小刻みにブルブルと震え始めると、それはやがて彼女の全身の震えへと続いた。そしてその震えが増長させるおんなの芯から沸き立つ曖昧(あいまい)な快感。その時、電車がグンッとれて、目前の停車駅に向けて再び走り始めた、が・・・。

「んクッ!!?」

 電車の揺れで立っている乗客の身体が一斉に前後左右に振られた。背後から強く押されたマヤは吊革を強く握り直す。が、一瞬下腹部の緊張が緩んだ途端だった、短くも不快な音と匂いが彼女の周りに漂ったのは。咄嗟に全身を目一杯硬直させて膨張する圧力の勢いを押しとどめようとしたマヤだったが、腸管の中に溜まった物質のほんの一部とはいえ、ソレとわかる音と臭気そして形を失っている物が詰められていた栓を弾き、体外に押し出されることを止めることは出来なかった。そしてその状況を無視するように下腹部への緊張がもたらす熱く、もどかしい快感。

(いや・・・こんなコト・・・)

 蒼白になりながら目を閉じるマヤ。口の中はカラカラに渇き、頭の中で意識がかき回されるように混乱している。ベットリと尻を汚したものの感覚に惨めさが込み上げ、何度目かの涙と共に鳴咽が彼女の喉を鳴らす。

「えッ!うぅッ!」

 電車は東多摩駅の駅ビルの中を貫通しているホームに滑り込んだ。事情を知らぬ乗客からの奇異と軽蔑の視線を浴びながら、下車客の流れに押されるようにホームに降りたマヤ。虚ろな表情でよろめくようにホームの側壁に設けられた大きな看板灯の横にもたれ立った彼女は視線を宙にさまよわせる。涙と汗で腫れた顔を走り去る上り電車の巻き上げる、ホコリっぽい風が打つ。乗降客の波が過ぎ去って人のまばらになったホームの片隅の、尋常ではないその姿に駅員が気付いて駆け寄ってきた時、神経を消耗し尽くしたマヤの汚れた尻の底に緊張を失った菊門を押し開いて、溜まっていたものがドロドロと溢れ出す。

「出ちゃう・・・もう、ダメ・・・」

 尻から溢れたものがショーツを汚して不快な匂いがプリーツスカートの下から漏れ放たれる。同時に羞恥の糸もプツリと断ち切られたマヤの身体を曖昧な歓びの余韻の震えが再び駆け抜けた。柔らかな外門の隙間から潤み緩んだ肉扉が膨らみ、尿道口が弾けると温く香るものが一気に吹きこぼれる。そしてそれはショーツの中で汚臭を放つものと一緒になって、内股から彼女の足元に滴り落ちて溜りを作った。

<< Pill…Pill… >>

 脇に放り出された通学鞄の中で鳴っている親友からの携帯電話の着信音など、今のマヤには聞こえる筈もない。

■■■

マヤ・六〜檻の中、再び/完



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